研究課題/領域番号 |
25380329
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松原 聖 日本大学, 商学部, 准教授 (40336699)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 所得と貿易 / 製品の品質に関わる費用 / 海外直接投資 / 商社 / 貿易仲介 |
研究概要 |
平成25年度の研究を始めるに先立ち、研究計画で展開していく予定とした論文"Home-Market and Cost Effects of International Product-Quality Allocation"を2013年3月にオーストラリア・メルボルン大学で開催されたAustralasian Trade Workshopで報告した。そこで報告の討論者及びフロアから、「2国間の所得の違いが2国の消費者の効用関数の違いにつながるとの仮定はアドホックであり、所得と貿易の関係に関する理論・実証両方の先行研究を参考にして定式化を改めるべきではないか」という指摘を多く受けた。よって平成25年度は当初の予定を変更し、先行研究のサーベイに多くの時間を割いた。次年度以降は輸出のみを考察している先行理論研究に直接投資の意思決定を導入し、新たな理論モデルを構築することを計画している。 同時に現在の定式化の応用も試みた。その一つとしてEuropean Regional Science Association (ERSA) 53rd Congressに参加し、論文"Trading Company and Indirect Exports"を報告した。本論文では外国市場に参入しようとする製造業企業が自ら投資して直接輸出をするか、商社の貿易仲介サービスを利用して間接輸出をするかについての意思決定を理論的に分析した。報告したセッションの参加者から論文改定のための有益なコメントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績にも書いた通り、当初展開予定の理論モデルのセッティング、特に先進国と途上国の消費者の効用関数についての仮定がアドホックであり、所得と貿易に関する先行研究を参照すべきであるとの指摘を受けた。特に両国の効用関数が同じ形でも所得の違いが消費者の消費パターンの違いやその結果として貿易パターンに影響を与えるような状況を分析するのが一般的であるとの批判を多く受けた。 この点を修正するための先行研究サーベイを行ったが、所得と貿易の関係についての研究、特に実証研究は近年盛んであり、このためサーベイに時間がかかり、モデルの修正まで取りかかれなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
現在も所得と貿易に関する先行研究を調査中であり、先行研究のサーベイが終わってから、既存モデルの海外直接投資への拡張を試みる予定である。論文の形になってから、名古屋国際経済研究会(NIESG)の研究会等で発表し、コメントを参考に改訂を試みていきたい。 合わせて関連研究として、海外直接投資の投資国企業へのスピルオーバーに焦点を当てた理論研究"Endogenous FDI Spillovers with Spillover Prevention Costs"をロシア・サンクトペテルブルク大学で行われるERSA 54rd Congressで報告予定である。本研究では近年問題となっている日本企業の営業秘密の外国企業への漏えいに焦点を当て、学会報告後に英文査読誌に投稿予定である。
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