研究課題/領域番号 |
25380329
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松原 聖 日本大学, 商学部, 准教授 (40336699)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 所得と貿易 / 製品の品質にかかわる費用 / 海外直接投資 / スピルオーバー / スピルオーバー防止費用 |
研究実績の概要 |
関連研究として、海外直接投資の投資国企業へのスピルオーバーに焦点を当てた理論研究"Endogenous FDI Spillovers from Japan to Russia and China with Spillover Prevention Costs"をロシア・サンクトペテルブルク大学で行われたEuropean Regional Science Associattion (ERSA) 54rd Congressで報告した。本研究で扱っているFDI Spillovers の例としては、近年問題となっている日本企業の営業秘密の外国企業(特に他のアジア諸国の企業)への漏えいとその防止のための投資を挙げることができる。よって理論研究ではあるが政策的含意を持つ論文である。 報告タイトルに"Spillovers from Japan to Russia and China"とあるのは、報告した学会でロシアも含めた新興国経済を扱った論文の報告を強く求められたためであり、日本・中国・ロシアの経済データを使った実証分析をしているわけではない。ただし論文では先進国企業から途上国企業へのFDI Spilloversを主に扱っており、その意味でタイトルへの上記文言の追加は的外れではない(以下の「現在までの達成度」での記述も参照されたい)。 学会発表で得たコメントを論文改訂に生かすべく現在作業中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文"Home-Market and Cost Effects of International Product-Quality Allocation"については、前年度からの問題(各国の消費者の効用、特に製品の品質評価のパラメータが各国の所得水準に依存するという仮定に対する批判)に加えて、現在のモデルではベルトラン競争で価格ゼロになってしまう問題を排除できないことが明らかになった。この点は前年度からの問題よりもさらに本質的な問題であり、現在も解決策を検討中である。 論文"Endogenous FDI Spillovers from Japan with Spillover Prevention Costs"については、過去の論文投稿時にレフェリーから「FDIソース国企業によるFDI Spilloversを防止するための投資の実例があるのか」という批判を受けた。そのため経済産業省『ものづくり白書』などを参考に、海外に進出した日本企業がどのように営業秘密漏えい防止のための投資等をしているかなどの事例を整理し、本研究との関連をまとめているところである。なるべく早い英文査読誌への投稿を目指している。
|
今後の研究の推進方策 |
論文"Home-Market and Cost Effects of International Product-Quality Allocation"については(1)上記のベルトラン競争に関する問題の解決(産業組織論の先行研究を参考に)(2)所得と貿易に関する先行研究の海外直接投資への応用、の順で研究を進めていきたい。 論文"Endogenous FDI Spilloversfrom Japan with Spillover Prevention Costs"については上述「現在までの達成度」の通りである。 もう一つの関連論文"Trading Company and Indirect Exports"では以下の点の定式化に取り組んでおり、今後も進めていく予定である(1)製造業者と商社の間でのバーゲニング(2)製造業者が先進国、すなわちより高い技術を持つ既存企業が存在する国に進出する際の商社の役割および、輸出国の厚生(製造業者と商社の利潤の合計)への効果(3)(明治期)日本の経験の(2)への関連付け。特に(3)についてはいわゆる総合商社が発展したのが日本と韓国だけであることの一つの説明になるのではないかと考えている。
|