本研究は、グローバル経済下における排出量取引制度について、その政策形成過程に焦点を当てたミクロ経済学に基づく理論分析を行ったものである。排出量取引制度の設計における様々な決定が政治的要因による影響を受けるとき、排出総量は政治的要因の大きさに依存して、社会的に最適な水準から乖離する。政府による非効率的な政策決定を前提にした場合、排出枠は初期時点において無償で配分されるほうが、社会的に望ましいことが示された。貿易自由化(グローバル化)は、そのような政府の非効率的な選択を是正する意味において排出量取引制度に好ましい影響を与えることが明らかになった。
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