研究課題/領域番号 |
25380336
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内藤 巧 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80314350)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イートン・コータム・モデル / 貿易と成長 / 貿易自由化 / 貿易の外延 / 特恵貿易協定 |
研究概要 |
本年度は,Eaton-Kortum型の多数国連続財リカード・モデルを動学化し,2国モデルでは扱えない特恵貿易協定等の効果を解析的に調べた. 論文"An Eaton-Kortum model of trade and growth with endogenous trade status"では,Eaton and Kortum (2002)の多数国連続財リカード・モデルをAcemoglu and Ventura (2002)の多数国AKモデルと組み合わせ,貿易自由化が時間を通じて国々の成長率や貿易の外延に与える影響を調べた.3国の場合に注目し,3つの主要な結果を得た.第一に,任意の貿易費用の永続的な低下は均斉成長率を高める.第二に,貿易自由化は自由化国の全ての輸出先への長期的な輸出品目の割合を増やす.第三に,貿易自由化の長期的効果は短期的効果と異なり,これは静学的イートン・コータム・モデルの厚生的含意を覆し得る. 更に,対称的な均斉成長経路を基準とすることによって,第1国と第2国の間の特恵的貿易自由化の効果について2つの追加的な結果を得た.第一に,短期的にも長期的にも,両国の第3国からの輸入品目の割合は減り(貿易転換効果),域内国からのそれは増える(貿易創出効果).第二に,短期的には第1国と第2国の成長率は高まるが,第3国の成長率は低まる.最後の結果は,静学的イートン・コータム・モデルでは第3国の資本収益率,従って厚生が低まることを示している.しかしながら,本動学モデルでは,均斉成長率の上昇を通じて第3国の厚生は高まり得る.この可能性は,データから逆算された貿易費用と技術のパラメーターに基づいた数値実験により確認されている. この論文は現在投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Eaton-Kortum型の多数国連続財リカード・モデルを動学化し,2国モデルでは扱えない特恵貿易協定等の効果を解析的に調べるという本年度の研究実施計画は達成されている.これは,「多数国化,貿易費用の内生化,定量化」という3つのキーワードで要約される本研究課題の第一段階が順調に完了したことを示している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,従来外生的に扱われてきた貿易費用を,例えば公共インフラ等に依存すると考えることによって内生化し,政府行動が貿易費用を通じて各国に与える影響を分析する. 平成27年度は,開発した理論モデルのパラメーターを現実の貿易データから推定し,それに基づいたシミュレーションを行うことにより,政策変更の効果を定量的に評価する.
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