研究概要 |
本研究の目的は、日本円が、根底にある経済ファンダメンタルズから乖離しているかどうか、またそうであるならばどの程度乖離しているのかということを、完全/制限的に合理的な経済主体に適応される「不均一期待モデル」(heterogeneous expectations (HE) model)を使うことによって考察することである。 1. 研究の第一段階として、日本の実質実効為替レートを計算した。日本の貿易量の変化に基づいて、次の諸国が貿易相手国として選ばれた:Australia, Canada, Hong Kong, China, Indonesia, Korea, Malaysia, Singapore, Thailand, USA, Euro Area. 中国の場合、実質実効為替レートの計算に不可欠な物価指数のデータが公表されていないため、多様な資料を利用して中国の消費者・生産者物価指数を推計した。 2. 1988年から2013年までの実質実効為替レートの計算の結果(base year=2005)、円の価値は2008Q4から2012Q3まで2005年のレベルーを上回ったが、 2012Q3以降は下回っている事が明らかになった。 3. 研究の第二段階として、日本の実質実効為替レートが経済ファンダメンタルズからどの程度乖離しているのかをBEER-approachで推計している。アジア諸国(特に中国)の場合、BEER-approachの推計に必要な変数(輸出・輸入物価指数等)のデータが公表されていない場合が多かったが、データの計算を終え、推計の準備ができた。
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