本研究は、企業データを用いて日本の製造業企業の輸出と生産性、マークアップの関係について分析したものである。本研究を通じて、日本の製造業における輸出と為替レート、生産性の関係について以下の知見を得た。 まず日本企業の輸出行動について、全要素生産性を生産効率と価格力に分解して地域別の特徴を分析すると、地域ごとに輸出企業の特徴に明確な差が出ることが明らかとなった。具体的には生産ネットワークを構築して製造拠点としているアジア地域には生産効率の高い企業が輸出を行っている一方で、最終消費地である北米には価格力を持つ企業が直接輸出を行っていることがデータによって確認された。また、金融危機以降の為替レート変動に対して、直接的な輸出への影響を危惧する見解と、サプライチェーンの構築による企業の対応力の向上を重視する見解の相違がみられたが、これらに関して、為替レート変動の輸出に対する影響について、生産効率や価格力を持つ企業がレジリエンスを持つことが確認できるか、についても実証的な検証を行い、そうした効果が限定的なものであることが確認された。さらに、2000年代以降の輸出の理論モデルに関してサーベイも行った。 本研究の研究機関は27年度までであり、28年度は成果普及に努めた。論文を国内セミナー(神戸大学)、海外学会(スペイン、マドリッド)で報告し、得られたフィードバックをもとに修正を加えた。本論文が評価されたことにより、スペインで開かれた学会報告においては、本論文の報告とは別に特別講演を依頼された。
|