研究課題/領域番号 |
25380340
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
近藤 健児 中京大学, 経済学部, 教授 (70267897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 イタリア / 国際労働移動 / 多国間経済連携協定 / 再生可能資源 |
研究概要 |
TPP交渉が大詰めを迎え、他方RCEPの構想が具現化するなど、多国間経済連携協定の深化・拡大は東アジアを軸に一層の高まりを見せている。こうした情景を背景に、財・サービスに加えて資本・労働の移動が自由化に向かう経済統合が及ぼす日本経済への影響について、特に労働市場の国際化の観点から理論分析を行った。 平成25年度は第一に多国間経済連携協定が国際間労働移動を促進し労働市場の統合が進んだ場合に、それが枯渇性資源および環境問題に直面する日本のような先進国の産業や経済厚生にどのような影響をもたらすのかについての研究を行った。これはKondoh (2006, RIE)およびKondoh (2009, APJAE)の研究を越境再生可能資源を考察するなどの拡張を加えたものであり、汚染発生源の工業財産業における汚染抑制技術の格差が工業材の生産性の格差を上回る時、国際労働移動は両国にとって利益になるという先行研究での結果を補完する結論に加え、自由貿易均衡では、再生可能資源産業の限界生産物が、工業財部門が引き起こす限界的な環境汚染よりも、先進国では小さく、途上国では大きい時、経済統合に伴う途上国からの労働移動が再生可能資源を増大させ、経済厚生を高めうることを示した。この研究はパレルモでの学会ERSA 2013での報告を通じて改良を重ね、最終的にThe International Economyに掲載される予定である。 また、3国モデルを使い、質的規制と量的規制という異なる移民政策をとる2つの先進国と1つの労働を送り出す途上国がある経済での、先進国間の経済統合の結果を分析し、2つの先進国がともに利益を得る条件を導いたバーリ大学のConiglio教授との研究は、バーリ大学での国際ワークショップで報告がなされ、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標に掲げた研究と関連の深い予備的かつ補助的研究である再生可能資源および環境を考慮した分析をすすめること並行しつつ、交付申請書に掲げた2つの課題それぞれについても研究を推し進めた。第1の課題である、異なる労働政策を採用する2つの先進国の経済連携協定の経済効果については、Coniglio教授と一応の分析を完了し、海外の学術雑誌に投稿するまでに進展した。労働の送り出し国でもあり受け入れ国でもあるタイに代表されるような国が、多国間経済連携協定でどのような経済的な影響を受け、連携にかかわる日本などの先進国にはそれがどのように関わってくるかを理論分析する、第2の研究課題については、現在まだ分析途上である。
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今後の研究の推進方策 |
第1の研究課題については、投稿した学術雑誌からの査読レポートを受けて修正し、最終的に掲載されるようにConiglio先生と引き続き研究協議を重ねたい。 第2の研究課題については、現在まだ国際労働移動の中流国の経済について、シンプルなモデルを用いた分析を開始したにとどまっている。今年度はこちらの課題で成果を上げるべく、研究に取り組む予定である。
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