本研究は、介護保険制度導入によって確立されたわが国の介護サービス産業について、介護保障が社会保障制度の重要な柱であることを踏まえつつ、かつその雇用創造効果を地域雇用に活かす方法研究することを目的としている。これには、介護サービス産業を単に狭義の社会保障の枠組みで捉えるだけでは不十分で、将来的に付加価値の高い、裾野の広い産業に育てる方針が必要であり、その具体的な方策と予想される効果とを理論的実証的に研究する必要がある。 研究初年度である平成25年度には、ベンチマークとして既存の雇用政策の雇用創出効果の大きさを計測し、その結果を中部経済新聞(2014年1月31日)や名城大学総合研究所『紀要』第19号(同年3月)等に寄稿した。必要な介護職員数は平成23年度の約55万人から平成72年度には訳113万人と倍増することが分かったが、この結果は、本研究の趣旨とは異なり、介護保険の雇用創出効果が大きすぎてむしろ将来における介護職員の供給不足を招く可能性が高いという現実を突きつけた。 これを受けて平成26年度からは、本研究に地域包括ケアの視点を加えることとし、必要な介護職員の一部は、有料有償制ボランティアなど地域における介護資源によって補う方法を研究した。この研究結果はフォーマルケアとボランティアの最適配分を理論的に求めたもので、第25回生活経済学会中部部会研究報告会(平成25年11月9日南山大学)で口頭発表し、それを大幅加筆修正したものが季刊社会保障研究(2015年秋号)に採録された。 最終研究年度である平成27年度は、将来における地域別の介護職員需給状況を推計し、国の推計する需給ひっ迫状況と一部異なる結果を得た。その結果は第27回生活経済学会中部部会研究報告会(平成27年11月28日中京大学)で口頭発表し、名城大学総合研究所『紀要』第21号(2016年3月)に寄稿した。
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