研究課題/領域番号 |
25380344
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
橋本 圭司 追手門学院大学, 経済学部, 教授 (60208444)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マクロ労働生産性 / 少子高齢化 / 高等教育 / 都道府県パネルデータ |
研究実績の概要 |
引続き、都道府県別パネル・データを用いて、年齢、学歴別労働者の人口割合と労働者一人あたりGDPで計測される労働生産性との関係を明らかにするという作業に従事した。『就業構造基本調査』等の資料が、1977-2007年の間の5年ごとのデータであったものを、26年度中に利用可能となった2012年にまで拡張して推定作業を行った結果、計量経済学的推定のパフォーマンスは向上し、これまでの推定結果がより頑健なものとなった。先行研究であるカナダでの分析結果と比較して、日本では、高齢かつ高学歴労働者の割合が1パーセント上昇すると、労働生産性は、カナダでは0.015パーセント低下するのに対し、日本では0.023パーセント上昇すること、さらには、大学教育の効果は、高齢者の場合に相対的に大きくあらわれる、という結果を得た。これらの推定結果を主要論点とする2編の学会報告論文“Higher Education and Labor Productivity in Ageing Society: Evidence from Japan”および“Do Older Workers with Higher Education Productive in Ageing Society? Evidence from Japan”を作成し、それぞれThe 13th Hawaii International Conference on Education, Jan.05-08, 2015およびInternational Academy of Business and Economics,2015 Orlando, Winter Conference, March 22-24において報告を行った。また、本研究課題で用いるパネル・データ分析の応用として、オーストラリア労働市場での高齢化の影響を分析した論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度当初の課題としていた、データ期間(1977-2007、5年ごと)の延長、すなわち、26年度中に利用可能となった2012年のデータを含む『就業構造基本調査』、『工業統計表』等の最新データを追加して推定を行うという作業を、ほぼ順調に行うことができ、より頑健な推定結果を得ることができた。ただし、先行研究結果との違いがなぜ生じているのかという問題は、高齢化社会における高等教育のあり方を考える上で非常に重要であると思われることから、引続きの考慮事項である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度においても、研究実施計画としては、本研究課題申請時と変わらず、(1)マクロ・データの適用可能性の検討、(2)データの収集、(3)計量経済分析手法の検討、(4)国内外の先行研究の検討、(5)国内外の学会報告の準備と実行、とする。26年度に新たにデータ追加と推定作業を行って、「大学教育の効果は、高齢者の場合に相対的に大きくあらわれる」と表現しうる分析結果を得ているが、なぜカナダと異なる結果が得られたのか、その理由について、できうる限り関連するデータを収集して推論を行うこととしたい。また、労働生産性と負の関連を持つ指標の一つとして「無業者数」があるが、それが少子高齢化による人口構造の変化とどのような関係を持つのか、検討を加えたい。とくに、多くの国々で顕在化している若年失業者急増の問題に関連させて、若年無業者の推移についてファクト・ファインディングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度に計画していた学会報告のうち、2015年1月に行ったThe 13th Hawaii International Conference on Education, Jan.05-08, 2015に関する外国旅費については、追手門学院大学より「国際学会発表支援」という名目の研究費(上限30万円)が与えられたため、当初の使用計画を変更し、その経費分を次年度に使用することとしました。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度より繰越された未使用額について、2015年6月27-28日に早稲田大学で開催される日本高等教育学会第18回大会での研究報告(現時点で同学会より発表受理の通知を受けております)およびThe 14th Hawaii International Conference on Education, Jan.03-06,2016(現在、同学会のコーディネーター Andrew Burgeから研究報告の要請を受けております)の旅費に充てることを計画しています。
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