国際貿易が各国の環境水準に与える影響を明らかにするために、国際産業連関表を用いて、1995年から2009年までの期間で40ヶ国を対象として、中間財を考慮した、貿易に内在化された汚染排出量を計算した。その結果を用いて、輸出入の構成がどの程度ダーティーかを示す指標であるPollution Terms of Trade (PTT)を各国に関して計算した。PTTは、輸出1ドル当たりに含まれる平均的汚染排出量と輸入1ドル当たりに含まれる平均的汚染排出量との比率として定義される。さらに、PTTを被説明変数、1人当たり所得等を説明変数として、国際貿易が環境に与える影響を実証分析で明らかにした。その結果は、当初にダーティーな国(汚染集約財の輸出と非汚染集約財の輸入に特化している国)は所得の増加とともにPTTが改善する(輸出入の構成がクリーンになる)ということである。この結果は、貿易に関する汚染排出は収束することを示唆しており、所得水準の低い国は汚染集約産業の輸出に特化するという従来の汚染逃避地仮説とはやや異なるものである。以上の結果は2015年度日本経済学会春季大会で報告した。 現在、各国の環境水準が収束するという仮説を検証するために、被説明変数をPTT変化率、説明変数を1人当たり所得成長率、前期の1人当たり所得、資本労働比率変化率、貿易開放度変化率等に修正した推定モデルを用いた実証分析を終えて、国際学術雑誌投稿に向けて改訂中である。
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