研究計画では、本研究の目的として、日本の個人レベルのマイクロデータと県レベルデータを接合し、独自データを構築しこれを用いて研究を進めるとしていた。具体的な検証内容は、(1)防災等における個人の特性とコミュニティー特性の補完関係、(2)さらには防災政策とコミュニティー特性の補完関係を検証することである。 平成25年度は、総務省統計局から提供された80万以上の観測数からななる大規模マイクロレベルデータを利用し、阪神淡路大震災が人々の街づくりへの参加度合いに与えた影響を考察した。つまり、大規模災害がSocial capital への投資行動にあたえる影響を分析した。その結果、阪神淡路大震災はSocial capital への投資行動を促すことが確認された。さらに、人々は被災地に近い県に住んでいるほど、阪神淡路大震災のSocial capital投資への効果が大きいことが分かった。ここから、政府や市場が十分機能しない状況に陥ることによって、これらを補完するコミュニティ機能(Social capital)の重要性が認識され、このコミュニティ構築の活動が活発化したと考えられる。この結果は、上記の研究目的のうち(2)に関係し、防災政策におけるコミュニティ機能の活用に一定の示唆を与えている。この一方で、現在は個人レベルのパネルデータを活用しつつ、東日本大震災発生後にSocial capitalが幸福度に与える影響の分析も進めている。
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