研究課題/領域番号 |
25380348
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
福田 晴仁 西南学院大学, 商学部, 准教授 (70508887)
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研究分担者 |
山本 雄吾 名城大学, 経済学部, 教授 (20295158)
水谷 淳 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (60388387)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モーダルシフト / 新規参入 / 線路使用権 / インフラ整備 / 上下分離 / オープンアクセス / 鉄道オペレータ / 線路保有会社 |
研究実績の概要 |
(論文)山本雄吾、水谷淳「ドイツにおける線路使用権の配分方式」『物流学会誌』第22号、平成26年5月 今世紀に入り、多くの欧州諸国では線路インフラの維持・管理主体と列車運行主体を分離する「上下分離」と、線路インフラを複数の列車運行主体に開放する「オープンアクセス」が導入された。ドイツでは、複数の鉄道オペレータ間で線路使用希望が競合した場合は、高額の線路使用料を支払う列車が優先される。この結果、線路使用権の配分に価格メカニズムが機能し、希少な線路容量の配分効率の改善が志向されるシステムとなっている。わが国においても、旅客列車と貨物列車の間の線路使用権の配分に価格メカニズムを導入すれば、貨物列車の増発が可能となり、モーダルシフトの推進に資する可能性があろう。 (共著書)福田晴仁「鉄道貨物輸送のインフラ整備」長峯純一編著『公共インフラと地域振興』中央経済社、82-97頁、平成27年3月 鉄道貨物の輸送力増強はモーダルシフトを促進する施策であり、社会的費用の抑制等、政策課題の解決に資するものである。しかしながら、わが国の鉄道は主要幹線において旅客輸送の需要が大きく、既存の設備を活用するのみでは、貨物輸送力の増強は困難である。このため、主要幹線において鉄道貨物インフラ整備が近年実施されている。鉄道貨物需要が最も大きく、線路容量に余裕の少ない首都圏・福岡間においてインフラ整備を推進したことは妥当と考えられる。 一方で、インフラ整備の効果が長距離に及ぶ性質を有しているにもかかわらず、整備に長期間を要していること、インフラ整備による輸送力の増強量が1列車あたりコンテナ貨車2両分という小規模にとどまっていることが問題点として挙げられる。何らかの公的支援を拡充することでインフラ整備に必要な当面の資金を確保し、需要が大きい首都圏・福岡間について輸送力のさらなる増強を図るべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(平成26年度)は①わが国の鉄道貨物市場への潜在的新規参入者の状況および鉄道貨物インフラの現状を明らかにすること、および②欧州諸国における鉄道貨物市場競争促進施策について、前年度の研究成果の一部を発表したうえで、より一層の理解を深めること、を目標としている。 ①のうち、前者については先行研究の分析および潜在的新規参入者と考えられる事業者(名古屋臨海鉄道、西濃鉄道)へのヒアリングを実施した。後者についても先行研究の分析および日本貨物鉄道へのヒアリングを実施し、その成果の一部として研究代表者(福田晴仁)が共著書(長峯純一編著)『公共インフラと地域振興』中央経済社の第5章「鉄道貨物輸送のインフラ整備」を執筆した。 ②については、前年度の成果の一部として研究分担者(山本雄吾、水谷淳)が論文「ドイツにおける線路使用権の配分方式」を『物流学会誌』第22号に寄稿した。ついで諸外国における鉄道貨物事業についての知見を得るため、小澤茂樹氏(大同大学)および藤田崇義氏(交通評論家)より専門的知識を供与される機会を得た。また前年度に引き続き、欧州諸国における貨物列車運行事業者へのヒアリング調査を実施した。ヒアリング先はDB Schenker Rail Deutschland AGである。 研究目的は当初予定したとおり進展しており、おおむね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成25年度)および第2年度(平成26年度)における調査・研究を踏まえて、鉄道貨物市場競争促進施策についての提言案の作成、再検討、修正を行い最終的な提言を取りまとめる予定である。 初年度および第2年度における調査・研究によって得られた資料・知見を整理し、鉄道貨物市場競争促進施策についての提言案を作成する。そのうえで、研究代表者(福田晴仁)および研究分担者(山本雄吾、水谷淳)による研究の打ち合わせを実施し、提言案の再検討、修正を行い、本研究の最終的な成果として提言を公表することを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、当該年度において計上していた人件費・謝金の予算額を、実支出額が下回ったためである。当該経費は主として諸外国における通訳の雇用に充当するものであるが、事前に詳細額を確定することが困難であり、過去の支出額から推計して予算を策定せざるを得ない。幸いにも現地において比較的安価に通訳を雇用できたため、人件費・謝金を予算額内で賄うことが可能となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は当初請求した助成金と合わせて、旅費として使用する予定である。次年度においては、前年度および当該年度における調査・研究を踏まえて提言案の作成し、再検討、修正のうえ最終的な提言を取りまとめる計画である。 当初の予定よりも、前年度および当該年度における調査・研究において収集した資料が豊富に得られたこと、また新たな知見(欧州諸国の鉄道貨物事業における車両リース市場の存在等)が得られたことから、最終的な提言の取りまとめには、研究代表者および研究分担者による打ち合わせを緻密に行う必要があると考えられる。したがって、次年度においては、当該打ち合わせにかかる旅費の予算を増額する必要があると思われる。
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