研究課題/領域番号 |
25380349
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
熊谷 聡 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (20450504)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 中進国の罠 / 産業高度化 / マレーシア |
研究概要 |
2013年度は、主にマクロ経済指標および貿易データを検討することで、世界各国の中から、まず「中進国の罠」に陥っていると考えられる国を特定した。「中進国」の定義として、同時代の米国の所得水準を100とした場合、10から50に該当する、という定義を採用する。続いて、「罠」に陥っている国の定義として、過去30年間、米国を基準とした相対的な所得水準がほとんど上昇していない、という基準を採用する。最後に、「製造業の失敗」派の中進国の罠の議論を踏まえるため、過去30年間において、輸出に占める製造業品の割合が、少なくとも高まってはいない、というカテゴリーを設ける。 その結果、アルジェリア、アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、コンゴ民主共和国、エクアドル、パナマ、南アフリカが「中進国の罠」に陥っている候補国となった。しかしながら、アフリカや南米に属するこれらの国は、高率のインフレーションか内戦のどちらかを経験しており、「製造業の失敗」を原因とする「中進国の罠」の例になりうるか疑わしいが、引き続き詳しい貿易データの分析を行う。 一方で、マレーシア経済についても、データから分析を加えた結果、名目ドルベースで見た一人当たり所得の伸びは、むしろ2000年代に入って加速していること、経済成長率を減速させた投資率の低下は、2000年代前半まではアジア通貨危機時の債務再編が続いていたこと、また、2000年代後半は、マレーシアから大規模な対外直接投資が行われたことなどが原因であり、恒久的な投資率の低下と断定できないこと、また、貿易データの分析からは、資本装備率が高い産業ほど輸出が伸びていることなどが明らかになった。従って、現状では、マレーシアを「中進国の罠」の典型として分類することはできないと考えるが、引き続き、詳細な貿易データの分析を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、中進国の罠の議論の整理や、マレーシア経済についての現状把握につとめたことにより、詳細な貿易データの分析は試験的なものにとどまった。しかし、より根本的な中進国の罠の議論に立ち返って様々なマクロ指標の分析を重ねたことにより、今後の研究を進める上で問題の理解が深まったと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、マレーシアおよび他の中進国の罠についての候補国について、貿易データと産業サーベイを接続した分析を進めていく。すでに、マレーシアでは資本装備率の高い産業ほど2000年代に輸出が伸びたという順調な産業高度化を示す暫定的な結果が出ており、これを他の国々についても確認していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
データ分析に必要なソフトウェア等の調達が遅れたこと、また、マレーシア国内他州での調査が予定よりも少なかったことで次年度使用額が生じた。 データ分析に必要なソフトウェア等について、年度当初に調達を行うことで助成金を支出する。また、マレーシア国内他州での調査を行っていきたい。
|