本研究では、中所得国の罠を貿易構造の観点から分析してきた。具体的には、罠に陥った低成長国と、そうでない国の間の貿易構造の差をBEC分類に基づく資本財・部品、消費財、素材、一次産品の4つの財に関する純輸出比率から分析した。 前年までに、順調に成長している国では輸出構造の高度化が一次産品→消費財→資本財・部品と順調に進む一方で、罠に陥った成長国では所得の高い段階まで一次産品の輸出が優位である傾向があることが分かった。本年度は、一次産品を主に鉱物資源と農産物に分類し、中所得国の罠についてどちらかと関係が深いかどうかを明らかにすることを目的として研究を進めた。その結果、一次産品の中でも産業用素材が最も消費財や資本財・部品などとの純輸出比率との負の相関が強いことが分かった。産業用素材の純輸出比率は、特に部品や資本財、耐久消費財の純輸出比率と強い負の相関がある。原油も同様の傾向があるが、産業用素材ほどではないことが明らかになった。 家計消費用の食品素材については、それ自体は資本財・部品の純輸出比率と負の相関が強いが、家計消費用の加工食品と正の相関が高く、家計消費用加工食品は消費財と正の相関が高い。これは、産業高度化への道筋が付く可能性を示している。
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