本研究では、特にシステムのあり方への影響が大きいと認められる次の3つの論点について、文献研究およびフィールドワーク(新宿区、一関市、夕張市、国立市)を通じて解明する予定となっている。すなわち、①不定形かつ多様な生活ニーズへの対応、②住民自治のあり方によるケアシステムのパフォーマンスへの影響、③「自己決定の強要」の発生する条件である。平成25年における各論点についての進捗状況は以下の通りである。 ①不定形かつ多様な生活ニーズへの対応:この論点については、分野横断的に既存の研究成果が存在する。平成25年度においては生活ニーズに関する文献調査を行った。また一関市において予備調査も実施した。他の調査予定地については、文献調査による準備を行った。 ②住民自治のあり方によるケアシステムのパフォーマンスへの影響:従来より、断片的には主に行政学、財政学、社会福祉学の分野で、多様な観点から議論されてきている。平成25年度においては、ケアシステムの内容を住民自身が選択するという観点から、概念的に拡散しがちな「自治」という概念の整理を文献調査を通じて進めた。 ③「自己決定の強要」の発生する条件:ケア対象者に関する自己決定については、成年後見制度に関する国際比較研究が最新の知見を与えてくれる。このような観点から平成25年度においては、日本、イギリス、ドイツにおける成年後見制度に関する研究を整理することを通じて、自己決定に関する法理を確認した。 総じて、平成25年度については、概ね調査研究が順調に進捗したと認められる。
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