今年度は本研究の最終年度にあたるため、研究課題に対する分析の進捗状況を点検した。本研究では各年度に研究課題を割り振ることで研究期間を通して着実に研究を前進させることを想定していた。本研究の2年目以降に割り当てられた研究課題である政策手段の選択問題、財源の選択問題および協調政策の選択問題については、これまで、国際学会における報告や査読審査付きの国際学術専門誌への投稿などを通じて、得られた研究成果の発信を行うとともに、その評価を受けてきた。 一方、初年度に割り当てられた研究課題である政策目標の選択問題については、初年度からの継続的なモデルの構築及びその修正に留まっていた。そのため、本研究の目標を達成するために、今年度は政策目標の選択問題について集中的に分析を行うこととし、コンピューターによる数値解析シミュレーションを利用するなどして、モデルの精緻化を進めた。そして、標準的な水平的税競争モデルを、政府の目的を内生化することによって次のように拡張した。 税競争が行われる前に、政府が慈善的に振る舞うか、リヴァイアサンとして振る舞うかを表明する段階を明示的にモデルに導入し、資本所有の形態によって、両タイプの政府間、リヴァイアサンの政府間、慈善的な政府間のそれぞれの税競争がサブゲーム完全均衡となることが示された。この結果は、政府の目的について先行研究で置かれていた仮定について理論的根拠を提示するだけでなく、国際的な税競争において、各国の政府が異なる態度を取る理由を説明するものである。この研究成果は論文としてまとめられ、国際学会において報告された。
|