平成27年度は研究プロジェクトの最終年度として、これまで収集してきた中国の地価データを県ごとのGISデータなどと組み合わせて、地価の決定および地方政府の行動に関する実証分析を行い、論文や研究発表の形で公表した。 まず、平成27年9月8日には、梶谷が中国上海市の復旦大学で開催された国際カンファレンスInternational Conference on Transition and Economic Developmentに参加し、藤井大輔との共著論文 "The spatial analysis about the competition between the local governments and the land prices: The case study of Zhejiang province" に基づいて報告を行った。本報告では、地方政府による土地払い下げを通じた企業誘致競争に注目し、土地払い下げ価格の空間的自己相関を考慮したspatial lagモデルを使用、工業用地払い下げ価格の決定要因を推定した。なお、同論文は現在海外ジャーナルに投稿中である。 また、平成28年2月15日には研究成果の最終報告会として、中国都市化政策と土地市場に関するワークショップを神戸大学で開催した。梶谷による報告"The Land Market Auction and the Corruption: The Case of Chinese Seven Big Cities "では、北京、上海、広州、杭州、成都、重慶、武漢という中国の七大都市の地価データを利用し、政府の腐敗が地価にどのように影響しているかを分析した。本研究の連携研究者である藤井大輔は、浙江省における2007年から2011年間の政府による土地払い下げデータを利用し、各郷鎮ごとの平均地価を算出した上で、地理的相関を考慮したヘドニック関数の推定する報告を行った。 また、岡本信広氏による中国でのフィールドワークを踏まえた報告「貴州省の都市化」からは、本研究課題の成果を踏まえ、今後中国の都市化問題の帰結を含めたより大きな課題に発展させていく上で、大きな示唆が得られた。
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