本研究は,最低賃金が世帯単位の貧困率に与える影響と,生活保護が保障する最低生活費の意図せざる上昇が稼働世代の就業率に及ぼす効果を検証した。その結果,最低賃金の上昇は,世帯単位でみた貧困率には何ら効果をもたないことが判明した。さらに,市町村合併で生じた最低生活費の外生的な上昇は,貧困に陥りやすい一部のグループの就業率を引き下げたことが示唆された。これらは,貧困問題という所得分配上の課題には,税制や社会保障といった所得再分配政策で対応する必要があること,その際には,勤労世代の就労インセンティブへの配慮が求められることを示唆している。
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