平成28年度は,前年度までに引き続き,公務員の給与の決定について,労働経済学における賃金決定の理論的研究から考察を深めるとともに,既存の実証研究についても検討した。そこでは,ミクロ経済学的な個別の賃金決定のみならず,マクロ経済学的な賃金水準の決定について考察した。理論的には,非営利企業の企業活動とも,あまり関連せず,さらに,公務部門の組織を考慮したモデルの構築が必要であるとした。今後の実証研究として,賃金決定の議論を広げるために,一般職公務員のみならず,特別職公務員(首長など)の報酬決定についても資料収集や考察を行い,一般職よりも,原資である財政学的な問題とより関連していることを検証した。 賃金決定に大きく関係していると考えられる労使関係にも注目したが,公務員については,特定な時期を別とすれば,近年は,賃金決定について,労使関係の状況とはあまりリンクしないことが明らかになった。しかし,これについては,指標(適切なデータが見当たらないので)の問題もあると考えられ,労使関係論からの考察もさらに必要である。また,国家公務員と地方公務員の給与決定についての連動については,過去よりは,連動が弱くなっていることがわかったが,この要因については,さらに,考察が必要である。 ただし,データの収集については,地方公務員については膨大であるために,十分に収集・整理されていないことも事実である。いくつかの自治体について例示して,さらに研究を続ける予定である。
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