研究課題/領域番号 |
25380364
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 功 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30239173)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療サービス / 介護サービス / 包括的診療報酬体系 / フリーアクセス / 医療・介護サービスの質に関する競争 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、医療・介護サービスを一体的に提供する複数の医療・介護事業者間の競争をホテリングモデルにより定式化した。モデルは以下の二点が特徴的である。第1は医療・介護サービスの利用者がフリーアクセスにより、医療・介護事業者を自由に選択できることである。第2はBanks, Parker and Wendel (2001)で導入された診療報酬と介護報酬をバンドリングさせた包括的診療報酬体系を用いていることである。ただし、Banks, Parker and Wendel (2001)では、医療サービスの受診により病状回復後、介護サービスを受けるという垂直統合型が前提とされているが、本研究では、後期高齢者のように病状回復が困難になる場合を想定し、同時に医療・介護サービスが提供される水平統合型により定式化している。 このモデルの下で包括的診療報酬体系を社会的に最適になるように求め、均衡における医療・介護サービスの質や医療・介護支出がどのような性質を有するかを理論的に検討した。 その結果、かかる包括的診療報酬体系の下では、医療・介護サービスをそれぞれ独立の事業者が提供する場合に比べ、医療・介護サービスの質を低下させることなく、医療・介護支出を減少できることを明らかにすることができた。 以上の研究成果は、医療・介護サービスの一体的に提供によって、利用者の便益や医療・介護事業者の供給コストに影響を及ぼさないことが前提となっており、この前提を次年度、緩めて分析を発展させたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、高齢化の進展により、確実に増加すると予想される医療・介護サービスへの需要に対して、各サービスの質を維持しつつ効率的な医療体制の構築を理論的に明らかにすることを目的としている。今年度の研究により、ベンチマークモデルを構築し、包括的診療報酬体系の有効性に関して、肯定的な結果を導くことができた点が評価に値するものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は医療・介護サービスの一体的に提供によるシナジー効果をベンチマークモデルに組み込んだ上で、包括的診療報酬体系の有効性を再検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の図書の手続きが年度内に間に合わなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
医療経済学および介護に関する図書の購入
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