開発途上国において少子高齢化は先進国を上回る速度で進行している。しかし、老齢期の所得水準の向上や年金などの制度は遅れている。手厚すぎる制度は将来の思い財政負担となり、経済成長を阻害する可能性を孕んでいる。適切に設計された公的年金制度の導入や人口動態の変化を加味した年金制度の構築は今後の財政の持続性に不可欠である。本研究では、現時点では加入率が低く、今後は加入率の拡大が予想されるという途上国の特殊性を取り入れながら途上国の年金規模と財政の持続性について考察を試みた。 分析において、複数の世代の取り扱いを容易にする世代重複型家計や勤労期に貯蓄し高齢期に貯蓄を取り崩して消費するといったライフサイクルモデルを取り入れた動学的一般均衡モデルを使用した。一期10年として一期に20歳から70歳までの6世代が共存する家計を想定し、生産部門はCobb-Douglas型生産関数と労働、資本、利子率、賃金率、減価償却からなる予算制約式を基に利潤最大化問題を解き、利子率と賃金率に関する一階条件を導出した。家計は消費と余暇からなるConstant Elasticity of Substitution(CES)方効用関数と労働、資本、利子率、賃金率からなる予算制約式を基に効用最大化問題を解いて消費と余暇の関係式を導出した。以上の式と消費にかんするオイラー方程式、財市場と資本市場の均衡条件からモデルは構成される。モデル開発に当たっては、ドイツのキール世界経済研究所及びベルギー自由大学のEcoModのモデル開発研修を受講し、研修の中で開発中のモデルを発表し、参加者のアドバイスを求めた。 モデルの概要は完成し、インドネシアの年金制度に適用する予定であったが、本研究者の海外勤務(ヨルダン財務省調査局・債務管理局への赴任)により中断している。
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