研究課題/領域番号 |
25380368
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
宮原 勝一 青山学院大学, 経済学部, 教授 (40301585)
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研究分担者 |
舟島 義人 青山学院大学, 経済学部, 助教 (30635769)
堀場 勇夫 青山学院大学, 経済学部, 教授 (70173648)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 景気対策 / 地方政府 / 公共投資 / 補助事業 / 単独事業 / 地方税 / ビルトイン・スタビライザー |
研究概要 |
一つ目の研究テーマである「国の景気対策と地域経済との関連性」については、景気対策に向けた国の意思決定が強く反映される普通建設事業費の補助事業に着目し、実証研究を行った。その結果、補助事業は一国全体の景気に反循環的である一方、都道府県レベルの景気変動との関連性がないことが明らかとなった。これは、国の景気対策はマクロ経済を安定化するように実施されている一方、地域景気の安定化ないしは下支えするようになされていないことを意味している。 二つ目の研究テーマである「国の景気対策に対する地方政府の政策反応」については、地方財政計画と決算の数値を比較し、景気との関連性を調べた。主な結果として、地方政府による公共投資は、単独事業が計画通りに実施されないことに起因して、一国全体の景気に対して十分に反循環的なものとなっていないことが示された。さらに、単独事業の景気への反応を計測し、単独事業は国レベルの景気や政府債務比率といったマクロ経済の情勢には反応しないことが分かった。また、2000年代に入ってからは、地方政府の財政的な硬直性に起因して、都道府県単位の景気変動に対して正循環的であることを指摘した。 なお、上記の研究内容については、現在も加筆・修正中であり、今後公表する予定である。さらに、以上の研究テーマに関連して、国と地方政府による公共投資の違いを検証するだけでなく、それらの政策効果の違いを検証する予定である。 三つ目の研究テーマである「地方税のビルトイン・スタビライザー効果」については、現在分析中である。分析の特徴としては、景気循環の周波数領域における地方税収の動向に着目している点にある。先行研究においては、単純に所得弾力性の計測を行うことにより、税のビルトイン・スタビライザー効果を調べているが、本分析では地方税の景気循環成分を識別して実証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のテーマは、「国の景気対策と地域経済との関連性」、「国の景気対策に対する地方政府の政策反応」、「地方税のビルトイン・スタビライザー効果」の三つに大別される。2013年度は、前者の二つのテーマに取り組み、研究ノートとしてまとめた。またその内容を改訂し、日本財政学会(2013年10月6日、慶応義塾大学・三田キャンパス)にて報告した。現在は、学会報告を通して得られた新たな視点を基に、加筆・修正を進めている。また、国と地方政府による公共投資の短期的な政策効果の違いについても検証を行っているところである。 さらに、三つ目の研究テーマである「地方税のビルトイン・スタビライザー効果」についても、現在推計中であり、2014年度中を目処に論文としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、当初の研究計画に大きな変更はなく、「国の景気対策と地域経済との関連性」、「国の景気対策に対する地方政府の政策反応」、「地方税のビルトイン・スタビライザー効果」の三つの研究テーマを軸に研究を進めていく。2013年度は、前者二つのテーマを中心に研究を進めてきたが、2014年度はまだ分析の途中段階である「地方税のビルトイン・スタビライザー効果」を主なテーマとする。ただし、前者二つのテーマについても、まだ実証研究を蓄積する余地があると思われるため、2014年度ないしは2015年度においても取り組む予定である。なお、上記三つのテーマに加えて、景気対策としての財政政策に関する理論的な分析についても積極的に行いたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際財政学会(イタリア大会)へ参加する予定であったが、そこで予定していた景気対策の効果分析に関する情報収集は、国内で金融政策および財政政策に関する議論が盛んになったことから国内での情報取集とデータ収集・整理に変更することが研究の遂行上有益と判断した。このような事から旅費として使用しなかった。また、研究の1年目でありデータ収集・整理のための物品購入が必要であったことから謝金およびその他の支出を抑え、物品費に充てた。 次年度購入予定の地域経済データに充当する予定である。
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