本研究では、次世代が負担する同化コストを考慮したJinno(2011)を拡張し、海外からの未熟練労働者の受け入れの純便益を分析する。 本年度は、年金制度の差に注目し、Bismark方式とBeverage方式の比較を行った。前者は、自らが納めた保険料に応じて年金給付量が決定されるのに対し、後者は納めた保険料に関わらず年金給付が決定されることに特徴がある。このような年金制度の差に注目した場合、海外からの未熟練労働者を受け入れる場合はBismark方式の方が好ましく、熟練労働者を受け入れる場合はBeverage方式の方が好ましいことを導出した。この結果の直感的な説明の一例を以下に挙げる。 Bismark方式において未熟練労働者を受け入れた場合、保険料の納付額の総額は増加するものの、移民者が納める保険料は相対的低い傾向になる。保険料に応じて給付額が決定されるため、移民者の未熟練労働者の年金給付の取り分は相対的に低くなる。この結果、受入国の労働者の給付額は受け入れ以前よりも多くなり、厚生が改善することになる。その一方で、熟練労働者を受け入れた場合は、逆のことが起こるため、受入国の労働者にとってはBismark方式よりもBeverage方式の方が好ましくなると考えられる。
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