研究実績の概要 |
本研究は、次世代が負担する同化コストを考慮し未熟練労働者を受け入れた場合の効果を分析したJinno(2011)を拡張し、労働の代替性・補完性、および未熟練労働市場における失業を考慮したモデルの構築、日本経済に応用したシミュレーション分析を行うことである。 本年度は、賦課方式の年金制度がすでに施行され各個人が子どもの数とその教育投資を内生的に決定する経済において、政府が新たに消費税を課し、得られた税収増をどのように使うべきかを比較検討した。比較分析を行ったのは、追加的な年金給付、児童手当、あるいは教育投資の3つである。この結果、十分子どもの数が多いような状況の下では、追加的な年金給付によって、全世代厚生をパレート的に改善できること、児童手当は高齢者世代や将来世代の厚生を改悪させること、その一方で、教育投資は高齢者世代を除き将来世代の厚生を改善させる可能性があることなどが導かれた。この研究成果は、Jinno M., Yasuoka M., 2016. "Are the social security benefits of pensions or child-care policies best financed by a consumption tax?", Business and Economic Horizons, Vol.12(3), pp.94-112にまとめられている。 さらに、賦課方式の年金制度の下、報酬率を固定したうえで移民者を受け入れる政策を行った場合、パレート基準を満たしたうえで財政的な改善につながることが計算された。しかし、現状では、論文という形までにはまとまっておらず、来年度において論文にまとめ、研究発表につなげたい。
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