研究課題/領域番号 |
25380371
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
原 ひろみ 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (50605970)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 職業能力開発 / 企業内訓練 / 自己啓発 / 最低賃金 / 女性 / 非正規雇用者 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、労働市場の現状と現行の労働市場政策の効果を計量分析を用いて計測し、新たな雇用システム構築のために必要性の高い政策を検討することである。平成26年度は、能力開発の実態についての研究と最低賃金の引上げが若年・女性・非正規雇用者の能力開発に及ぼす影響についての分析を主に進めた。 職業能力開発の実態の研究からは、非正規雇用者と女性の職業能力開発機会の乏しいことが明らかにされるとともに、非正規雇用者であっても職業能力開発を行うことで、スキルや生産性が高まることが示された。しかし、非正規雇用者の場合、スキルや生産性の上昇にともなって賃金も上昇しているわけではないことも示された。今後、非正規雇用者のさらなる増大が予想されるなかで、彼らをどのように雇用し、かつ処遇していくのかの検討の必要性が示唆される。 最低賃金引上げの影響に関する分析からは、最低賃金が引き上げられると中・高卒の女性の企業内訓練(Off-JT)と自己啓発が減少することが明らかにされた。この現象は、男性ならびに大卒・大学院卒といった高学歴の労働者には観察されない現象である。中・高卒という低学歴の女性は、現状でも賃金の低い仕事に従事している割合が高いが、最低賃金の引上げによって人的資本蓄積も阻害される可能性が示された。つまり、最低賃金は、労働市場のなかでも弱い立場にある労働者の金銭的処遇を維持・向上することを目的に導入されている制度であるが、当初目的以外のマイナスの効果があることが明らかにされ、労働市場政策の企画・立案にあたっては多方向からの議論の必要のあることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、女性や非正規雇用者の能力開発の実態を解明する分析を計量分析を用いて行うとともに、最低賃金の引上げが人的資本蓄積に与える影響に関しても、能力開発基本調査の個票を使って計量的に分析を行い、完了した研究成果を雑誌論文や図書として公表した。また、現在進行中の研究に関しても、学会発表を行い、また改訂を進めることで、完成に近づいてきている。残された研究課題はあるものの、今年度中にめどが立つと考えている。よって、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27度は、女性の能力開発の実態についての研究の一環として、「賃金構造基本調査」の個票を使って、能力開発の成果である賃金の実態についての分析を行う。女性の能力開発の分析を行うには労働の在り方・賃金についての分析も必要となるため、「労働力調査」や「社会生活基本調査」の個票を用いた分析も行う。また、公共職業訓練の効果についての分析も今年度中に論文として完成させる予定であり、最低賃金の引上げが若年・女性・非正規雇用者の能力開発に及ぼす影響についての分析に関しても、「能力開発基本調査」や「就業構造基本調査」の個票の利用申請を行い、さらなる分析を行ったうえで、雑誌論文としての完成を目指す予定である。ただし、育児・介護休業法と次世代法の効果の比較については、研究の最終年度である今年度中の完成は難しいと見込まれるため、将来の分析に備えて準備作業を行うことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
執筆中の英語論文の英文校正が年度をまたぐこととなり、今年度に繰り越すことにしたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
英語論文の英文校正代として使用する予定である。
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