金融政策と財政政策の相互依存関係のもとで物価水準が決まってくるという「物価水準の財政理論(FTPL)」にもとづいて,なぜ最近の日本では大胆な金融緩和が実施され続けているにもかかわらず物価水準が上昇する明らかな兆しが見えてこないのかという問題を分析した.分析に当たっては,標準的なFTPLと異なり,世代重複モデルをベースとした動学モデルを構築し,国債発行を通じた世代間の政治的対立も考慮に入れた.そして,政治的には高齢化がその原因として考えられ,また財政当局の債務返済先送り体質が金融緩和の効果を減殺している点を明らかにした.
|