海外生産をするような大企業の経済活動の影響は小規模企業や地方に波及するのかどうか、人々の消費行動と産業別雇用創出量から分析した。第一に、ある属性の集団(例えば、経済活動が活発な産業で働く人)と他の集団では購入する財やサービスが異なり、ある産業の経済活動が消費を通じて他の産業に波及しにくいかを分析した。全国消費実態調査および家計調査を使用し、product spaceの手法を用いた。その結果、2006年から2013年にかけて消費の財間の相関は低下していた。同様に、雇用動向調査のデータを用いて、財やサービスの消費ではなく、産業別雇用創出量でも分析すると、産業間の雇用の創出量も相関関係が低下していた。つまり、海外生産をするような企業の経済活動が、他の産業に波及しにくくなっていることが明らかになった。 第二に、人々の社会的ネットワークの形状は経済波及効果に影響を与えているかを分析した。社会的ネットワークの形状としてJapanese General Social Survey(JGSS)の「仕事について相談をする相手」の情報を用いて、都道府県、世帯主の産業、所得などの属性別に、ネットワークの繋がりの数、クラスター数、相談相手同士の繋がりを推計し、形状を分類した。その結果、特定の都道府県、650万円以上の所得、54歳以下の人ほど多くの人と繋がっていた。また、特定の都道府県に住む人ほど、仕事を相談する相手同士が知り合いであった。次に、消費行動として、全国消費実態調査とJGSSの購買行動の調査を用いた。先に分類した属性別ネットワークの形状を利用し、消費行動を分析すると、人との繋がりの数が多いほど、消費の財間の相関は高くなっていたが、繋がっている人同士がさらに知り合いであると、相関の程度は低下した。つまり、多様な人と多く繋がっているほど消費行動を通じた経済波及効果は高くなることが示唆された。
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