研究課題/領域番号 |
25380394
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福田 祐一 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (00243147)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国債リスクプレミアム |
研究概要 |
本研究は,国債リスクプレミアムの中で,金利リスクやマクロ経済リスクに起因する部分を定量的に明らかにすることを目的としている。より具体的には,国債リスプレミアムと,国債の割引率から得られる金融変数ファクターおよびマクロ経済変数から得られるファクターとの関連を明らかにすることである。本年度は,本研究を進めていく上で不可欠なデータ整備を中心に行った。国債リスクプレミアムを求めるには,複利利回りデータやスワップ金利データから保有期間収益率を近似する方法,利付債データから割引債の割引率を計算し,割引債の保有期間収益率を求める方法などがある。本年度は,まず,財務省ホームページより複利利回りデータを収集し,購入したNRIインテグレートデータサービスの為替・ユーロ市場データからスワップ金利データを収集した。その作業と並行して,複利利回りやスワップ金利データから保有期間収益率を近似するためのプログラムと金融変数ファクターを計算するためのプログラムを開発した。さらに,大阪大学が契約しているNEEDS-Financial QUESTデータベースより利付国債の債券属性や公社債店頭売買参考統計値等を収集し,割引国債の割引率データであるスポットレートの計算プログラムを整備した。また,リスクプレミアムの計算には,安全資産利子率が必要であり,NRIインテグレートデータサービスの国内金融データを購入し,CDレート等の短期金利のデータを利用できる環境を整えた。さらに,大阪大学が契約しているNEEDS日経総合経済ファイル,購入したNRIインテグレートデータサービスの国内金融データ等を用いて,マクロ経済データを収集した。スポットレートの計算プログラムに国債の発行制度の変更等を考慮し若干の修正を施す必要はあるが,25年度の作業により次年度以降の本格的な実証研究を進めていく準備は整ったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるにあたり重要な作業は,複利利回り,スワップ金利,割引債の割引率等の金利データの整理である。具体的には,まず,複利利回り,スワップ金利データを用いて保有期間収益率や金融変数ファクターを構成するフォワードレートを近似するためのプログラムの開発を行うことである。次に,利付国債の債券属性や公社債店頭売買参考統計値等から割引国債の割引率データであるスポットレートの計算プログラムを整備することである。後者のスポットレートの計算プログラムでは,取引されている全ての10年物利付国債データを用いて満期0.5年から10年までの割引率を逐次計算していく必要があり,扱うデータ量と計算量が膨大である。さらに,プログラムの開発に際しては,経過利息の調整や即時リオープン導入といった制度変更にも対応する必要がある。これらの困難を伴う作業の多くの部分が平成25年度に完了しており,また,保有期間収益率とフォワードレートの近似計算プログラムが完成していることを考えると,本研究はおおむね順調に進展していると考えて良い。
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今後の研究の推進方策 |
今後の最初の作業は,実証分析である。まず,利用可能な全標本期間を対象とした分析を行い,全体的な傾向をとらえたい。これまでの日本の国債市場を取り巻くマクロ経済環境や金融政策の変更をみると,債券リスクプレミアムの決定要因が構造変化をおこしている可能性を考慮する必要がある。利付国債10年物複利利回りは,1990年代前半には5%であったものの,2000年代には1から2%で推移し,大きく低下している。また,日本の金融市場は,1997年以降の金融危機,その後の日本銀行のゼロ金利政策,量的緩和政策,2008年のリーマンショックといくつかの大きなショックを経験してきている。これらのショックは,債券リスクプレミアムの決定要因にも影響している可能性を否定できず,全標本期間を対象とした全体的な分析だけではなく,構造変化テストを用いた部分標本期間分析も重要な含意をもたらすことが予想できる。このため,構造変化テストを併用しながら,より精緻な実証分析を行うことも,今後の重要な研究方向である。そして,これら実証作業終了後は,英語での論文執筆に取り掛かる予定である。また,それと並行して,国内外の学会や大学,研究所でのセミナーでの報告の可能性も探り,論文に国債市場の専門家の意見を反映させ,より完成度の高いものに仕上げていきたい。そして,最終的には,英文校正を経て,海外雑誌に投稿し,掲載を目指すことを考えている。また,本研究で得られた実証的な政策含意についてはホームページ等で積極的に情報発信していくことも考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究推進のために必要としていた書籍の発行が平成26年度に遅れ,平成25年度の助成金で購入することができなかったことと,NRIインテグレートデータサービスを,当初見込み額より安く利用することができたこと等により,次年度使用額が生じた。 平成25年度助成金で購入予定であった書籍は,平成26年度中には発行される予定であり,研究計画に変更はなく,前年度の研究費を含め,当初予定通りの研究を進めていく。
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