研究課題/領域番号 |
25380395
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松林 洋一 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90239062)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グローバル・プルーデンス / グローバル・インバランス / リジョナル・インバランス / 国際資金フロー / ドル・スワップ協定 |
研究概要 |
本研究は、新たな国際政策協調の枠組みとして、「グローバル・プルーデンス政策」という施策を構想し、その具体的な手段と有効性を考察していくことにある。本研究で構想するグローバル・プルーデンス政策の対象としては、経常収支、資本収支、クロスボーダーでの金融機関の取引、外貨準備など多岐にわたっている。平成25年度は、とくに資本収支やクロスボーダーでの金融機関の取引といった国際資金フローの変動をいかに監視し、制御するのかといった問題意識にもとづいて以下の3つの考察を行った。 まず第1に、国際資金フローの事実確認を丁寧に行うために、2000年代におけるグローバル・マネーフローの特徴を詳細に展望した。同時期には「グローバル・インバランス」「リジョナル・インバランス」として出現したフロー面での資金フローのダイナミズム、欧州と米国の間で展開されたグロス面での資金フローのダイナミズムについて、データの精緻な観察、検討を行った。 第2は、第1の考察で展望した欧州と米国の巨額なグロス資金フローの特徴を、実証分析を通じて明らかにした。具体的には、欧州金融機関の対米投資行動を、ミクロデータを用いて計量的に考察し、ドイツ、イギリスでは米国の住宅価格の高騰を背景に、巨額な対米与信が行われていることが明らかとなった。 第3は、「グローバル流動性」という概念を検討し、同概念との関係においてグローバル・プルーデンス政策のあり方を考察した。グローバル流動性とは、BIS(国際決済銀行)では「グローバルな見地からの資金調達の容易さ」と定義されるが、端的には金融機関のクロスボーダーでの与信の展開、ということになる。そこでまずBISのデータを用いて、対外的な与信動向を詳細に観察するとともに、その変動要因、制御要因を詳細に検討した。とくに事後的な制御手段ともいえる「ドル・スワップ協定」の有効性について計量分析を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究については、第1に学会報告でのパネル報告を行い、大きな方向性について様々な 意見交換を行っている。第2に複数の計量分析を行い、論文として公表している。第3に グローバルマネーフローに関する実証分析に関して、編者として著作を出版した。以上の理由から、研究目的に対して、着実に研究を進めているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、具体的に以下の2点を考えている。 第1は、「グローバル流動性」という概念を定量的により詳細に検討していくことである。現在国際金融市場では、グローバルな流動性に関して、さまざまな指標が開発され利用され始めている。これらの情報を用いることによって、グローバル流動性のダイナミズムについて、より精緻な考察を試みることにしたい。 第2は、新興市場国の国際資金フローの変動要因をより詳細に検討していくことである。とくに今後は日米といった大国の金融政策との関係において、新興市場国の資金フローが短期、中期の観点からどのように変動していくのかという点について定量的に明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張に関する旅費支出分が、為替レートの変動により当初予定額より若干変更になったため、残金が生じた。 次年度の研究費(データ購入分)に補填したいと考えている。
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