研究課題/領域番号 |
25380396
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩壷 健太郎 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90372466)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 為替レート / 証拠金取引 / 気質効果 / 心理バイアス / 行動ファイナンス |
研究概要 |
FX証拠金取引において、証拠金の目減りが激しい投資家に対してFX業者が行うロスカットが、投資家保護になっているのかについて分析を行った。気質効果の度合いの高い投資家は損切りができずに含み損を抱えるため、ロスカットの対象になりやすいという見方があるが、一方で、ロスカットの対象になるのはレバレッジ比率の高いリスク愛好的な投資家であり、気質効果の度合いが低い投資家かもしれない。そこで、実際にロスカットの対象になった投資家のリスク選好、収益、投資戦略を分析し、ロスカットがなければ彼らの収益はさらに低下したのかを検証する。 分析では、まず日本のFX投資家の取引データ(個票データ)をロスカット経験者と非経験者の取引に分類し、それぞれのグループで取引ごとの収益率と建玉の保有期間をもとに、生存時間分析(Suvaival Analysis)を行った。 分析の結果、ロスカット経験者と非経験者のいずれのグループでも、収益率が正の建玉は負の建玉よりも建玉を決済する確率が低いという結果になり、含み損の損切りができないという気質効果が見られた。とりわけ、ロスカット経験者は、含み損を抱えている場合と含み益を抱えている場合での決済確率が大きく異なり、ロスカット非経験者よりも気質効果の度合いが強いことが明らかになった。 ロスカットになるためには、気質効果の存在に加え、レバレッジ比率が高いことが条件となっており、レバレッジ比率、気質効果、ロスカット確率の関係を検討することが今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書の計画にほぼ沿った形で研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
投資収益率と投資戦略との関係を分析する。投資戦略には、投資頻度、投資額、レバレッジ比率、通貨の種類、投資期間、ニュースに対する反応など様々な切り口がある。日本の個人投資家の場合、特に重要なのは高金利通貨と低金利通貨で戦略が大きく異なるという点であろう。高金利通貨への投資は金利差狙いの長期キャリー・トレード、低金利通貨への投資は相場変動を利用した短期の取引と想定される。通貨によっても最適な投資戦略は異なるであろう。投資戦略と収益性の関係を分析することで、日本の個人投資家の実態、および最適な投資戦略を取引データを用いて検証したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
海外での学会発表の予定がなく、外国旅行費に予定していた額を支出しなかったため。 来年度は、海外での学会発表を行う予定である。
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