本研究課題の2014年度の内容は、日本企業が機関投資家を含めた大株主からの介入を受けた決定要因およびその介入の結果について実証研究を行ったものである。株主は支配権を求めない形で投資先企業への規律付けの役割を果たすことができるのか、という問題を答えるために、株主提案に焦点を絞る。米国では株主提案は法的拘束力がなく、しかも役員人事以外のものに限定されている。一方、日本ではこのような制限は存在しない。したがって、米国に比べ日本では株主提案のほうが効果的であると考えられる。04年から13年まで株主提案を受けた日本企業200社を対象に行った分析の結果は、次のようなことが明らかになった。 (1)株主提案は年々増加の途をたどっており、株主主権の意識が台頭していることを示している。(2)株主提案の内容において、提案数の多い順番で定款変更、役員選任解任、利益配分、増配、役員報酬となっている。 (3)個人株主による提案は定款変更と役員選任解任にかかわるものが主な内容であるのに対し、機関投資家は主に増配と利益配分に関心を示している。(4)役員と銀行の持株が少なく、外国人持株が高く、利益が低い会社ほど、役員選任解任を求める提案を受けやすい。(5)将来の投資機会が少なく、安定的な利益を得ている会社の場合、増配と利益配分を求める提案を受けやすい。なお、株主持株は説明要因の有意性がなくなる。(6)定款変更などを求める株主提案の場合、会社規模が正の相関関係を持つ以外、株主持株や利益などの説明要因は有意性がなくなる。 (7)大株主から提案を受けた会社のみ、有意の超過報酬率が観察される。(8)提案者の持株が高く、総会時間が長く、外国人持ち株が高い企業ほど、議決の結果、高い賛成票が得られる。
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