1990年代後半から急増し、現在では主流となった会社更生スポンサー(企業および投資ファンド)による更生債務の一括弁済型、言い換えれば企業買収型の会社更生に焦点を当て、企業再生制度の中心的存在である会社更生法による企業再生の効率性を検証した。当初計画では、更生企業価値の代理変数としての産業小分類レベルの産業成長率と買収価格(債権弁済額+株式払込金)との関係の分析を考えていたが、国の産業分類基準の制度的変更の影響が大きく、遂行困難であると判断した。そのため、準備的分析で行った倒産処理に要した期間についての基本統計量の分析によって、会社更生の変化の影響の程度を客観的に把握することから分析に着手した。統計的分析に加え、買収型会社更生の影響が生じるメカニズムについての仮説の検証を行った。官報公告からデータを収集してデータベースを作成し分析を遂行した。本研究の主要な分析結果は以下の通りである。 ・1990年代と比べ、2000年代は、会社更生の申し立てから手続きの終結までの期間が大幅に短縮されたことを確認した。 ・買収と事業譲渡の選択について、買収主体がストラテジックバイヤーか投資ファンドかによる違い等が存在することを確認した。 ・会社更生スポンサーによる買収型会社更生の増加により、倒産処理に要する期間が短縮されたことを確認したが、そのことは倒産処理の効率化が進んだことを直ちに意味するわけではない。効率性の判断のためには、買収後の状況の把握が必要である。そのため、買収後に買収企業・投資ファンドが旧更生会社を保有しているか、売却または解散しているかに注目し、有価証券報告書データを利用した分析を行った。一定の傾向が観察されたが、サンプル数を増加させるため、会社更生事件に加え、民事再生事件も追加し、より客観的な追加分析を遂行中であり、その結果と統合した上で学術論文として発表予定である。
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