De Paoli (2006)を共通通貨圏の仮定に拡張しさらに内生的デフォルトの可能性を導入したモデルを導出した上で共通通貨圏における最適金融政策を理論的に分析した。つまり、De Paoli (2006)のモデルを2国モデルに変形し、かつ共通通貨圏の仮定に拡張した。ここで両国の政府の予算制約には横断条件が課され、一方の国にはデフォルトの可能性が存在しないもののもう一方の国にはデフォルトの可能性が存在すると仮定した。このデフォルトの可能性が存在する国こそが内生的デフォルトのメカニズムが導入される国である。中央銀行は線形化されたモデルを制約として効用関数の2次近似より得られた損失関数を最小化、つまり厚生コストを最小化するように金融政策を運営することを仮定した。モデルの陽表的な解析解を得ることはきわめて困難なため高性能PCおよび行列演算ソフトを用いたSensitivity Analysisが行った。次にFerrero (2009)に従い(近似的)最適金融政策ルールを合理的期待均衡を満たす範囲内で高性能PCおよび行列演算ソフトを用いてグリッドサーチで求めた。最後にグリッドサーチで得られた最適金融政策ルール、テーラールールおよび固定利子率ルールそれぞれについてSensitivity Analysisを行い、それぞれの政策がもたらすマクロ経済変数の動学の特徴を確認した上で厚生コストを効用関数の2次近似から得られた損失関数に従い計算した。ここで、最適金融・財政政策ルールの下ではインフレ率、GDPギャップの変動が小さいことおよびデフォルトが生じるものの1期もしくは短期で収束することおよび厚生コストがきわめて小さいことを確認した。
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