平成25年度に得られたモデルを小国開放経済およびその他世界で構成される共通通貨圏の仮定に変更したモデルを導出した上で共通通貨圏を構成する小国開放経済の最適財政政策を理論的に分析した。グリッドサーチで得られた最適財政政策ルール、Bohn (1998)の財政政策ルール、固定利子率ルールそれぞれについてSensitivity Analysisを行い、それぞれの政策がもたらすマクロ経済変数の動学の特徴を確認した上で厚生コストを効用関数の2次近似から得られた損失関数に従い計算した。なお、小国開放経済は金融政策を運営することができないが財政政策は運営可能なため危険資産たる自国の国債のオペレーションを通じて固定利子率ルールは実施可能であることに触れておく。最適財政政策ルールと固定利子率ルールのマクロ経済変数の動学的性質が似通っていること、つまりインフレ率、GDPギャップの変動が小さいことおよびデフォルトが生じるものの1期もしくは短期で収束することおよび厚生コストがどちらも似通っておりきわめて小さいこと、Bohn (1998)のルールの下ではインフレ率、GDPギャップの変動が大きくデフォルトが長期にわたり生じることおよび厚生コストが最適金融政策ルールと固定利子率ルールよりも大きいことを確認した。つまり、デフォルトの可能性をはらむ共通通貨圏で採用されるべき財政政策は固定利子率ルールであることを示した。 さらに実証分析に取り組んだ。まずアドホックな金融政策ルールを仮定した上でユーロ圏のデータを用いて構造パラメータをベイズ推定し、この構造パラメータを所与に固定利子率ルールおよび平成27年度前半の理論分析で得られた最適金融政策ルールの下でのマクロ経済変数のパスをシミュレーションした。
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