研究課題/領域番号 |
25380403
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小暮 厚之 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (80178251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 長寿リスク / モデリング / 評価 / 要介護状態 |
研究実績の概要 |
要介護状態を考慮に入れた死亡率モデルを構築する場合,要介護者の死亡数データが利用できないという困難な問題点がある.その一方で,要介護状態に応じた人口数は利用できる事が多い.たとえば,厚生労働省が毎年度公表している「介護保険事業状況報告」には,要介護(要支援)状態区分・性・年齢階級別の受給者数が公表されている.年間受給者は要介護認定者とほぼ一致していることから,各要介護状態の年間受給者数を要介護状態の人口と見なして利用することができる.平成27年度は,このような要介護状態の人口を用いて,新たなモデルを提案した.このモデルは,通常のLee-Carterモデルに要介護状態を表すパラメータを加えて拡張したものであり,Li and Lee (2005)によるcommon factor modelやButt and Haberman (2009)によるモデルと同様な構造を持つ.しかし,死亡数データを必要としないという点に加え,要介護状態を表すパラメータに順序制約を課している点でこれまでに提案されたモデルと大きく異なる.また,提案したモデルの最尤法による推定を議論し,それに基づいてモデル推定アルゴリズムを構築した.さらに,我が国の公的介護保険のデータに適用し,要介護状態別の将来死亡率の予測を試みた.これらの結果は草稿にまとめており,その内容は2016年6月にシンガポールで開催されるInsurance Risk Research Conferenceにおいて発表されることが決定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度において,本研究の骨格となる要介護状態を考慮した死亡率モデルを開発し,予備的なデータ分析を試みた.しかし,本研究の目的を達成するためには,モデルのさらなる改良とより本格的なデータ分析が必要となるため,補助期間の延長を申請し,承認された.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては主に最尤法の立場からモデルの推定と将来死亡率の予測の問題を考察した.しかし,最尤法による予測はパラメータ不確実性という困難な問題に直面する.今後は,このパラメータ不確実性という問題に対処するために,ベイズ法の枠組みへの拡張を考察する.さらに,ベイズ法に基づいて導出される要介護状態別死亡率を用いて,弱体者年金のような介護リスクに備えた商品のプライシングを行う.また,このようなプライシングが適切か否かを判断するために,シミュレーションや実際のデータ(公的介護保険データ)による検証作業を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が十分に進まず,国際研究集会での発表を取りやめたため,旅費の支出を予定通りに執行できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
参加を予定しているアメリカ保険リスク学会及び長寿リスク学会の旅費に使用する予定である.また,提案したモデルのさらなるデータ分析を進めるための計算環境の整備及び計算補助のために使用する.
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