研究課題/領域番号 |
25380408
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
渡邉 修士 日本大学, 経済学部, 教授 (20612542)
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研究分担者 |
澤田 充 日本大学, 経済学部, 准教授 (10410672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CDS(credit default swap) / 同時方程式 / トービットモデル / premium / 需給 |
研究概要 |
CDS(クレジット デフォルト スワップ)は信用リスク売買のための金融派生商品であるが,その市場規模は急速に拡大するとともに,金融危機の発生とも密接な関係を持っている.CDSの価格変動幅は大きく,その変動メカニズムの解明は,当該市場及び金融システムの安定化を考える上でも重要な課題である. CDSの価格変動の要因を明らかするために,クレジットリンク債(CLN)の数量データとCDSの価格データを用いて,CDSの需給関数を同時方程式Tobitモデルを推計した.推計の結果,預貸率の低下などにより投資家の投資機会が減少すると保証(protection)の供給が増加しCDS価格は低下する.一方,金融危機により,保証を転売した業者がその買い戻しが必要になると価格が急騰することを示すことが出来た.これは,この市場の極端な流動性の欠如と金融派生商品故の時価評価の必要性の結果であるが,これは当初の予想通りであった.CDSも含め多くの金融商品における大きな価格変動は極端な需給変動に起因すると考えられるが,多くの場合,数量データの入手困難故に同時方程式の推計が困難となっている.本研究は日本のユニークなデータを用いることでこの問題を克服することが出来,CDS価格形成の問題点を解明出来た. 分析が順調に進み,良い発表の機会も与えられた結果,ジャーナル掲載に漕ぎ着けることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度からデータ収集や分析方法の研究を先行させた結果,研究は順調に進捗し,International Review of Finance(日本ファイナンス学会とアジアファイナンス学会共同発行)のコンファレンスで発表(2013年7月3日),最終的に,同誌(Special Issue: Japanese Financial Markets : Corporate Finance, Institutions, and Investments) Volume 14, Issue 1, pages 1-28, March 2014に掲載されるに至った.また,IRFの日本の金融市場のコンファレンスという良い機会にも恵まれ,議論を通じて研究を深めることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
25年度計画は当初計画以上に進展し,ジャーナル掲載に漕ぎ着けた.今後については,当初計画に従い,個別企業のCDS価格データを用いたパネル分析を進めたい.特に,価格データと共に,数量データとして,クレジットリンク債(CLN)の個別データ収集を進めたい.これまで,CDSの他にも社債等流動性の低い金融商品の価格形成・売買について系統的に調べて来たが,その中で流動性の大小が果たす役割が決定的に大きいことが明らかになった.流動性という観点からCDS研究をさらに発展させる形で,より流動性の高い現物国債の売買についても研究を開始したい.これによって日本の債券市場の構造の解明を進めることが出来,金利や信用リスクの分析を深化させることが可能になる.
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)パソコン・ソフトウェア購入を先送りした.(2)CDSデータの購入まで研究が進まなかった. (1)パソコン・ソフトウェア購入を実施する.個別企業のCDS価格データを用いたパネル分析についての研究を進め,(2)クレジットリンク債(CLN)の個別データを購入する.
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