研究課題/領域番号 |
25380409
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
乾 孝治 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60359825)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ティックデータ / 高頻度取引 / ボラティリティ / ビックデータ |
研究実績の概要 |
H26年度は,H25年に引き続き,研究成果論文の投稿と学会発表を進めると同時に,ティックデータを利用した新しいリサーチの始動を行った.今年度新たに取り組んだテーマは,日経平均先物の基礎的な分析と,個別銘柄のボラティリティ情報を利用したポートフォリオ構築への応用研究である.特に後者は,近年,注目を集めている最小分散法やリスクパリティ法としてしられるポートフォリオ構築法であるが,高速取引のティックデータを用いることで,短期的なボラティリティを精度良く推定できる可能性が高いので,応用研究との位置づけで実施したものである.H26年度に掲載された学術論文と学会発表は以下のとおりである. (1)S. Nagata and K. Inui,"Does High-Speed Trading Enhance Market Efficiency? Empirical Analysis on "Arrowhead" of Tokyo Stock Exchange ”Journal of Trading (2)池畑・乾,ボラティリティのみに注目した資産配分方法の検証,日本オペレーションリサーチ学会,2014年秋季大会
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の一つである「高速取引市場におけるHFTと情報トレーダーのモデル分析」については,情報トレーダーの影響を明示的に分離することは出来なかったものの,当初予定した通り,極めて短い時間(1/1000秒)間隔における取引コストとマーケットインパクトの評価を行い,高速取引手段を持たない投資家のデメリットを明らかにする成果を報告した.これは第2の目的である「機関投資家の最適トレーディング戦略の研究」の一部に該当する結果を含んでいる.その成果はJournal of Tradingに掲載されるに至った. しかしながら,具体的成果として期待した「Flash Crash等の発生を察知する流動性指標の開発」や「機関投資家の最適トレーディング戦略」の提案には至っていない.その理由は,高速取引市場では機関投資家の注文も小口化しているため,注文の大きさだけではトレーダー種類(情報トレーダーとノイズトレーダー)の分類が,ある程度の傾向は把握できるに留まること,個別銘柄の注文パターンの分析が想像した以上に容易でなこと,などである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,日経平均指数取引に関連する価格形成の分析を中心に取り組む予定である.具体的には,日経平均先物構成銘柄と日経平均先物の価格形成の因果関係を調べることで,指数取引が価格形成に与える影響の詳細を調べる.また,日経平均先物の超短期的な挙動に注目して,その価格分布の特性についても調べたい. 昨年度までは個別銘柄の分析を行っていたが,データ量も多く注文パターンの分析が困難であるため,今年度は先物および現物バスケットの価格変化に注目した分析を行うのである.株式先物の利用者は,個人よりも機関投資家の比率が相対的に高く,また,機関投資家のトレーディング戦略においても先物は重要な役割を演じているので,当初の目的である機関投資家の最適トレーディングに関して,有用な結果が得られることが期待できる.先物と現物価格には裁定取引による因果関係が存在するはずなので,微細時間における現物・先物関係を裁定取引の視点から検討する.また,市場が大きく動いた日に関して,現物バスケットを構成する銘柄の内,寄与度が大きい銘柄の動きをその他銘柄と相対的関係についても調べることで,市場流動性が枯渇するリスクについて示唆が得られることを期待している.
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の残額が出たが金額が少ないので次年度に使用するべきと判断したため.
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度交付金額とあわせて有効に利用する予定である.
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