研究課題/領域番号 |
25380413
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
猪口 真大 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (60387991)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 資本移動 / 国債利回り / 金融政策運営手段 / 新興国市場 / アジア |
研究実績の概要 |
本研究は、国際資本の流出入や対外ショックが、新興国・途上国の金融市場にどのような影響を与えているか、さらに、そうした影響を通じてアジア地域の新興国の金融政策運営にどのような困難が生じているかを考察することを目的としている。そのために、アジア諸国の金融政策運営手段に関する分析、および、資本流入が各国の長期金利に与える影響についての分析を行う予定である。 平成26年度においては、前年度に得られたデータ等を使用し、国際資本移動と国債利回りの関係について世界各国を対象にパネル・データを用いて推定する作業を行った。具体的には、各国の10年物国債利回りに対して、海外投資家による国債購入、債券購入、ポートフォリオ流入が及ぼした影響を分析した。その際、上記の変数に加えて様々なコントロール変数を説明変数として用い、新興国と先進国を含むパネル・データ分析を行った。特に、新興国と先進国の違い、世界金融危機発生以前と以後の期間の違いについて注目して考察した。分析の結果、資本流入の新興国の国債利回りへの影響が、世界金融危機後に大きくなっており、とりわけ、外国人投資家の債券売却によって利回りが上昇したことが分かった。さらに、こうした傾向は先進国よりも新興国で顕著であった。なお、本研究に関しては論文としてまとめ、海外の学会で報告を行った。 次に、アジア諸国の金融政策運営に関する研究でも、データや資料の収集を進め、推定作業を開始した。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイを対象に金融政策の事実上の操作指標はどのようなものだったのかを実証分析により明らかにする計画である。特に、2008年の世界金融危機発生以前および以後における期間で、各国の金融政策の操作指標が変化したのかを考察する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際資本の流入が新興国の長期金利に与えた影響に関する研究については、平成26年度に前年度に収集した資料やデータを使用し、推定作業を主に行った。さらに、それらを論文としてまとめ、海外の学会で報告を行った。 アジア諸国の金融政策運営に関する研究についても、関連する資料や先行研究の収集を行いながら、推定作業に着手している。平成27年度に実証分析の結果を得て、論文作成作業を行う見通しである。 以上の状況はいずれも当初の計画と整合的で、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては、アジア諸国の金融政策運営に関する実証分析を主に行う。引き続き資料や先行研究の収集を進めながら、推定結果を得て論文を作成する計画である。対象国は、当初、インフレーション・ターゲッティングを導入したタイとフィリピンを考えていたが、それらに加え、インドネシアとマレーシアについても考察する。推定の詳細については、計画通り、金融政策運営に関する公表された情報を詳細に分析したうえで時系列分析の手法を用い、金融政策の事実上の操作指標はどのようなものだったのかを特定する。すなわち、金融政策の運営手段として、実際に、金利を用いて操作していたのか、それとも、非借入準備等の量的な政策手段も用いて操作していたのかを明らかにする。その際、2008年の世界金融危機発生以前および以後における期間で、各国の金融政策の操作指標が変化したのかを分析する。 さらに、主に平成26年度に研究を進めた国際資本移動と長期金利の関係についての論文は、引き続き学会等で報告を行いながら、得られたコメントをもとに改訂作業を続ける。平成27年度中には完成させた論文を海外のジャーナルに投稿する予定である。
|