当初、補助事業期間の最終年度である平成27年度に完了するはずであった北海道に限定した地域金融の競争環境と地域経済との関連についての実証研究の課題を、研究期間を延長して対応した。同時並行で進めていた、全国のデータを用いた同様の検証課題において使用した推計モデルの試行や、事業所の定義を細分化するなどの工夫をすることで、分析の精緻化を行った。あわせて、最新の「平成26年経済センサス」のデータを分析対象に含め、より現実的な政策的含意が得られることを目指した。より最近時のデータを用いた分析結果ほど、貸し手の競争度の高さはリレバンに寄与しないことを示唆するInformation仮説と整合的であることが確かめられた。残念ながら、平成28年度中の公刊は実現できなかったが、新しい推計結果に基づく草稿は “The Effect of Bank Branch Competition on Firm Entry and Exit: Evidence from Hokkaido in Japan” としてまとめ終えており、今年度の前半には専門誌への投稿を行う予定である。この研究成果の一部については、「地方創生における地域金融の役割-北海道における信用金庫の可能性-」という課題にて、釧路公立大学の地域経済セミナーにおいて、一般の参加者にも開放した場で報告を行った(2016年11月21日)。なお、上記の全国のデータを用いた同様の検証課題については、北海道に限定した分析内容をより補強する結果が得られており、今年度の前半にはDiscussion paperとしてまとめ、学会等での報告を経たうえで、年度内に専門誌への投稿を行う予定である。
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