研究課題/領域番号 |
25380415
|
研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉本 喜美子 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (70351434)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際金融 / 西アフリカ / 株式市場 / スピルオーバー分析 / 金融政策 / グローバル流動性 / 資本流入 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
昨年度より継続中の、アフリカ主要株式市場における株価指数のグローバル(地域)連動性分析は、Emerging Markets Reviewに採択され、掲載された。 『現代アフリカ経済論』の7章「アフリカにおける金融の役割」を執筆することで、アフリカにおける金融市場の深化の実態、為替制度採用の傾向と変遷、世界金融危機と欧州債務危機がアフリカ経済に金融面から与える影響に関して総括した。 昨年度より継続中の、Reactions to Shocks and Monetary Policy Regimes: Inflation Targeting versus Flexible Currency Board in Sub-Saharan Africa(西アフリカとガーナ・南アフリカの為替・金融政策の施行方法を、FPAS モデルを用いたシミュレーション分析で比較する)論文は、Journalからリバイス要請が来たため、共著者Gilles Dufrenot氏らとともに、再投稿準備にかかっている。 さらに、先進国の金融政策が西アフリカ諸国のマクロ経済に与える影響の経路を検証するため、①日本のアベノミクスにおける質的・量的緩和策の有効性、②先進国の金融(量的)緩和策が資本流入を通して新興(途上)国に与える影響とその経路、の2点に関して実証分析した。①は大阪銀行協会の最優秀論文として評価され、②はEast Asian Economic Association の第14回年次学会において発表した。Global liquidityが新興(途上)国へ流入する問題は、受け入れ国の為替制度・資本規制・マクロプルーデンシャル政策と密接に関連付けられるため、西アフリカ各国の為替・金融政策の施行方法を、最新の動向を踏まえて再検証できる素地を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
西アフリカの金融政策を、それのみで検証することは、データの制約上、非常に難しいため、最近の動向(世界金融危機後の先進諸国における量的緩和政策の実施と、それがGlobal Liquidityという形で、新興国・途上国に資本流入をもたらす動き)を踏まえ、西アフリカを含む新興/途上国に、金融の側面からどのような影響をもたらすか検証できたから。 Emerging Market Reviewに採択されたアフリカ主要株式市場の連動性分析に関する論文を、アフリカ学会で発表したことが契機となり、アジア経済研究所から依頼を受け、「アフリカにおける株式市場の発展とその経済効果」を2014年版のアフリカレポートに掲載し、幅広い読者層にもアフリカ金融市場の状況を説明することができたため。 さらに、この論文が契機となって、Sabri Boubaker, Bonnie G. Buchanan, and Duc Khong Nguyen氏らより、Risk Management in Emerging Markets: Issues, Framework, and Modelingという本の分担執筆依頼があり、4倍の審査を通過して1章分の執筆権を確保した。現在、Regional Integration and Risk Management of African Stock Marketsというタイトルで、滋賀大学の吉田裕司氏と大阪学院大学の松木隆氏との共同研究として、論文投稿準備にかかっているから。 同様に、『アフリカ現代論』が、アフリカ開発銀行東京事務所の協力を得て、英語版でも出版されることが決定したため。
|
今後の研究の推進方策 |
『現代アフリカ経済論』が、英語版で出版されることが決まったため、担当執筆した7章「アフリカにおける金融の役割」に、最近の動向(資本規制やアフリカ金融市場の地域統合など)を加える作業を進めている。 現在アフリカには地域共通の株式市場を創設しようとする機運が高まっているため、その先駆けとなった西アフリカにも焦点を当て、株価の連動性の観点から株式市場の地域連携のメリットを再検証し、これを先述のRisk Management in Emerging Markets: Issues, Framework, and Modelingという本の1章として、Regional Integration and Risk Management of African Stock Marketsというタイトルで、滋賀大学の吉田裕司氏と大阪学院大学の松木隆氏との共同研究で、論文を投稿する準備にかかっている。 先進国の金融(量的)緩和策が資本流入を通して新興(途上)国に与える影響とその経路に関しては、推計手法の工夫と、データの細分化がさらに必要であることから、その点を反映させて、論文を投稿する予定である。 西アフリカ各国における、植民地時代と、その後の独立以降の為替・金融政策の変遷を詳細に理解し、Cliometricsの論文を書くため、パリ・マルセイユ・ボルドーをはじめとするフランスの古文書館を訪問して、長期データの収集にもあたりたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度以降、研究代表者の勤務校がかわり、国際学会出張のしにくい業務に振り分けられてしまい、当初予定していた研究会発表をキャンセルせざるを得なくなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の新規予算と合算した研究費の使用計画を以下に行う。最も大きな支出は、国際学会・および国内学会での発表である。次の主要な支出としては、本年度に持ち越しとなっている金融関連データおよび時系列ソフトの新規購入とバージョンアップである。その他、学術雑誌への複数の投稿料および英文校正代を必要とする。
|