研究課題/領域番号 |
25380417
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
小塚 匡文 流通科学大学, 総合政策学部, 准教授 (20403230)
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研究分担者 |
平賀 一希 東海大学, 政治経済学部, 講師 (40528923)
藤井 隆雄 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80547216)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トービンのq / 為替レート / グレンジャーの因果性 / 動機別投資 / LAVAR |
研究実績の概要 |
今年度は、資金の需要者である企業の投資行動を検証した。近年は円安などにより企業業績の回復が見られたとされるが、これは投資行動から支持されるのだろうか。以上の問題意識から、本研究計画から逸脱しない範囲で、企業の投資行動についての研究を進めた。 "Exchange Rate, Marginal q and Investment Behavior of Small and Medium-Sized Enterprises in Japan: Time Series Evidences of Manufacturing Industries"において、わが国の中小企業を対象として、為替レートからトービンのq及び設備投資動向に対するグレンジャー因果性を検証した。対象業種は為替レートの影響が強いとされる製造業(化学、鉄鋼、生産用機械、電気機械器具、自動車及び部品)である。分析の結果、これらの中小企業では、為替レートの変動は、トービンのqや設備投資に対してグレンジャーの因果性がないことが示された。このことから、円安の効果は中小企業に対しては限定的であり、中小企業には新たな施策が必要であると述べている。 「投資動機とトービンのq:グレンジャー因果性による検証」では、大企業(素材系・加工組立系)の動機別投資データ(日本政策投資銀行『設備投資調査』)を用いて、トービンの限界qから各動機別設備投資へのグレンジャー因果性を検証した。その結果、トービンの q が上昇しても、成長につながるような設備投資を実行していない可能性があり、成長戦略の再考が求められることを示唆している。この研究結果は、中小企業の投資行動を検証する際に参考になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクロデータによる分析は1年目には進めることができなかったが、2年目にはソフトウエア(STATA)の利用によるデータ整理、関連研究のサーベイなどを行った。また2年目に必要となるデータ(更新分)を購入し、現時点での最新データがそろっている。 またマクロデータによるFAVAR(Factor Augmented VAR)モデルによる分析は、プログラムコードの作成などを進めている。 前述のように、今年度は中小企業の投資行動についての研究が進み、今後の研究に資する知見が得られた。また本研究とは別で、ミクロデータベースを用いた共同研究を進めており、そちらからの知見との相乗効果が期待される。そのため、まだ未着手の分野・作業は残るものの、おおむね順調に推移しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ミクロデータによる分析では主にトービンのq型投資関数をパネルデータで推定する。具体的には中小企業の外部資金制約の存在、信用保証協会の各種保証制度の効果などを、設備投資への影響という観点から年次別・産業別に検証していく方針である。 マクロデータによる分析では、銀行の中小企業向け貸出の変動要因について、FAVARモデルによる分析を進める。具体的には、政府の国債発行・政府投資や日本銀行による金融政策といった、マクロ経済政策の影響を、様々なマクロ変数要因を考慮することができるFAVARモデルによって分析するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に、計画よりも高価なデータを購入したため、旅費・書籍代を他の研究資金でまかなった結果、残額が生じた。平成26年度に、研究に使用しているパソコンが故障したため、計画外ではあるが新規にパソコンを購入した。このパソコンの購入費用が平成25年度の残額を上回ったため、データ購入の予算が不足することが予想された。そのために購入データセットを見直し、一部のデータの購入を差し控えた結果、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定にある通り、関連書籍の購入、英文校正代、出張旅費が、平成27年度の主な資金使途である。このほかソフトウエア代にも使用する可能性がある。
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