研究課題
本研究では、金融機関の貸出行動やその貸出資金の使途としての企業の設備投資の動向について検証した。本研究では主に中小企業に注目する方針であったが、データの制約や比較検証のため、大企業・中堅企業も対象としている研究も含まれる。最終年度には、主に設備投資行動についての研究を進めた。特に為替レートがTobinのqや設備投資に対してGrangerの意味での因果性があるかどうかを検証した。中小企業を対象とした場合では、化学・鉄鋼・一般機械・電気機器・輸送機器・製造業全体、のいずれの場合でも、前述のGrangerの意味での因果性がなかったことが示された。これは、中小企業では輸出業務にかかわる企業の比率が低いことが背景にあると思われる。さらに言えば、近年観測された円安の効果が中小企業の製造業に対しては弱く、中小企業対策としては他の施策が重要であることを、この検証結果は示唆している。最終年度にはこの他に、動機別投資とTobinのqとの関係、設備の不可逆性とTobinのqの効果との関係、企業の環境保全活動と企業価値との関係、などの研究も進めた。なお、研究期間前半では、金融機関の貸出行動、特に中小企業に対する貸出行動についても検証した。特に信用金庫と国内銀行の違いに注目して、貸出残高・産出・マネタリーベース・金利の4変数からなるモデルをもとに、主に貸出変数が他の変数のショックに対してどのように反応しているかを検証している。その結果、量的緩和政策時には貸出が伸びなかったこと、その要因としてポートフォリオ・リバランス効果と整合的な状況が発生したことが考えられること、中小企業向け貸出に対しては金利と貸出との間に通常想定されるような負の関係が成立していなかったこと、そして信用金庫と国内銀行とでは貸出方針の違いから、量的緩和政策解除後に貸出の産出に対する反応が異なっていたことが示された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (3件)
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