研究課題/領域番号 |
25380420
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井原 基 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (00334144)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 経営史 / 国際経営 / アジア市場戦略 |
研究概要 |
本研究は、欧米日の化粧品・トイレタリー産業におけるアジア市場戦略の歴史を企業の比較研究により考察するものである。平成25年度の研究実績は以下のとおりである。 第一に、日本企業、特に花王、マンダムを中心とした企業のアジア(タイ、インドネシア、中国)展開についての聞き取り、資料・データ収集調査を実施した。特に各企業の現状のマーケットシェアについて網羅的なデータを集めることができ、今後の研究を進める上で有効な指針となった。 第二に、2013年7月13日に予定されている「日タイ経営史会議」に参加し、化粧品・トイレタリー産業における日タイ関係について報告を行い、合わせて、同会議に招聘されたジェフリー・ジョーンズ教授やタイ人研究者との意見交換を行った。花王のタイ展開についてはタマサート大学が刊行している英文査読誌Japanese Studies Journalに投稿し、採択された。本論文は2014年度中に掲載される予定である。 第三に、年度後半から欧米企業のアジア進出の歴史に関する研究活動に着手した。P&G、コルゲート、ユニリーバを中心にアジア進出の歴史についての英文文献の収集・整理に努めた。ジョーンズ教授の助言を受けつつP&Gアーカイブの訪問を試みたが、先方からの協力は得られなかった。ハーバード大学ビジネススクールのhistorical collectioonにおいてユニリーバに関する一次史料を収集した。 英文の経営学・国際マーケティングの学会誌では新興国市場戦略に関する研究は2002~2003年から急増している。これらの議論の中で特に、新興国での競争戦略をめぐる議論(差別化戦略・コストリーダーシップ戦略および両面戦略)、子会社の能力と多国籍企業の進化に関する議論といった、経営史研究においても有用な理論的示唆をえることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本企業と欧米企業のアジア市場戦略の歴史を比較するという本研究の目的を遂行する上で、初年度に当たる平成25年度においては、日本企業に関する聞き取り・資料調査に加え、欧米企業に関する資料調査に着手し、資料収集を進めることができた。また本年度の目的の一つであった日タイ経営史会議での研究報告を完了し、さらに論文発表という形での発信の作業を進め、来年度の英文論文発表の見通しを立てることができた。問題点としては米国企業のアーカイブ訪問が思うようにいかなかったことがあるが、その代わりにユニリーバに関する史料を想定以上に集めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2016年度前半を中心に、欧米企業のアジア市場戦略史に関する史料収集に努める。P&Gアーカイブからの協力が得られないという問題が生じたので、ユニリーバを事例考察の柱とする方向で今後の史料収集を進める。シンシナティの米国花王については予定通り2016年度前半に訪問し、欧米企業と花王とのアジア市場戦略の比較のための聞き取り調査を行う。2016年度後半から2017年度にかけては、予定通りインドネシアの化粧品・トイレタリー市場をマンダムを中心に調査する。全体を通じて、欧米企業について主たる研究対象の変更はあるが、日本企業と欧米企業のアジア進出戦略の歴史比較という当初の研究目的を堅持し、研究を進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中のレーザープリンタ購入(10万円相当を予定)を延期したため物品費の使用額は想定よりも少なくなったが、平成26~27年度に想定していた英文論文執筆のための校正費用が25年度中に発生したため、差し引き14,793円の次年度使用額が生じた。 平成26年度中にレーザープリンタを購入する。今後も新たな英文論文の執筆を予定しているので、英文校正費は平成26~27年度にも必要になる。この他は概ね事前の使用計画通り研究費を使用していく。
|