研究課題/領域番号 |
25380423
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50174066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済史 / 戦後 / ドイツ / 金融 / 銀行 / 貯蓄 / 競争 / 市場経済 |
研究概要 |
1.本研究期間において、研究代表者は第二次大戦後のドイツ金融経済の重層的複合的特質を解明することを目的として、ドイツ連邦文書館と貯蓄銀行史資料センターを訪問し、資料を分析することによって次のような研究実績の内容をえた。 2.ドイツの金融経済構造は第二次大戦前から主に3つの部分市場に分節化されて展開した。第一に、短期信用と証券業務、外国業務などを中心とする民間銀行、第二に貯蓄業務と抵当業務などの長期信用業務を中心とする貯蓄銀行、そして第三に中小営業と農業を領域とする信用協同組合銀行である。 3.資本主義経済の進展とともに、金融経済においては個人貯蓄による資本形成がますます重要な業務として比重を高め、資金をいかに運用投資するかが課題となってきた。金融経済のこうした機能変化は1920年代にはじまり、世界恐慌とナチ期の介入的金融経済の中断のち、1960年代に頂点に達し、貯蓄銀行にもっとも大きな利益をもたらした。 4.金融的機能変化過程において、1960年代には銀行3業態は相互に他の部分市場に参入・対立し、ドイツの伝統的な分節化された重層的構造は転換期を迎えた。60年代の競争競争の結果、従来の競争制限的な「競争協定」と広告制限は廃止され、貯蓄銀行に有利な租税優遇措置は縮小ないし廃止された。ドイツ金融構造はあらたな市場的統一の段階を迎えることになり、W. シュテュッツェルは自由競争を原則とする金融経済秩序政策を構築した。 5.本研究は、機能変化と市場構造との間の矛盾を要因として金融経済が対立・調整・新形成を果たすプロセスを明らかにする点に研究の意義と重要性があると考えている。本研究の中間成果は東京大学経済史ワークショップで報告し、それをもとにして論文としてまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究目的では、実態、政策秩序、構造変化の3つの研究領域にしたがって研究を進める計画であったが、本研究期間においてはW.シュテュッツェルの金融政策秩序の研究分析に重心をおいたために、実態分析が十分に進められなかった。今後においては、後掲のように、ビーレフェルト貯蓄銀行の具体的事例に基づいて研究をすすめ、それに合わせて政策秩序との関連性の分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、1950年代から60年代までのドイツ貯蓄銀行・振替銀行協会年次報告書および連邦文書館での関連史料を収集した。平成26年度においては、ドイツ・ビーレフェルト市貯蓄銀行と交渉し、1950年代と60年代の営業資料を閲覧する許可をすでに得ているので、8月ないし9月に訪問する予定である。これらの史資料によって、貯蓄銀行が地域経済において具体的にいかなる業務活動を行い、どのような競争的対立を引き起こしていたかを明らかにし、これまでの研究成果である金融機能の変化と構造の矛盾とその対立・調整・政策秩序の新形成の具体的プロセスを分析することにしたい
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次年度の研究費の使用計画 |
注文した図書(洋書)が年度内に刊行されなかったために残額が生じた。 次年度中に上記図書を購入して残額を使用する。
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