研究課題/領域番号 |
25380423
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50174066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経済史 / 戦後 / 金融 / 銀行 / 貯蓄 / 構造 / 競争 / ドイツ |
研究実績の概要 |
1.本研究期間において、研究代表者は前年度の研究状況を踏まえ、今後の推進方策に基づいて、次の2テーマで研究を進めた。 2.第一のテーマは、ドイツ1950~60年代における貯蓄銀行の中間層信用についてである。このために研究代表者は、平成26年8月後半にドイツ・ビーレフェルト貯蓄銀行を訪問し、同行に所蔵されている「貯蓄銀行信用委員会議事録」などの行内資料を閲覧し、また当時の頭取との面談を行った。この研究調査にあたっては、同行広報室長の助力を得たが、その経緯はドイツの雑誌"Wissenschaft fur die Praxis", Heft 78, 2015, S.19. に紹介されている(後掲15.「備考」欄のwebアドレス参照)。 実際、1960年代初頭までに貯蓄銀行は域内の中間層企業(おもに所有者と経営者が同一の中小・中堅企業)に対して投資向け長期資金を提供し、そのことによって貯蓄銀行は中間層信用機関としての地位を確立していくことになった。この過程について、ビーレフェルトでの収集資料を活用して論文にとりまとめ中である。 3.第二の研究テーマは、1960年前後における西ドイツ経済の構造変化と金融業の自由化についてである。これに関して研究代表者は、新たに、当時ドイツの代表的な経済関係学会の一つである社会政策学会(経済学・社会科学学会)が1962年大会において「成長経済における構造変化」のテーマのもとに活発に議論していることを見出した。この大会は、戦後西ドイツ経済が復興経済から自由主義経済へ構造変化していることを問題とし、そのなかで貯蓄銀行の公益性と金融経済の自由化の必要性を議論している。この議論は、ドイツ社会的市場経済と金融政策・金融秩序の関係を問う本研究課題に密接に関連するものであり、慎重に分析してこれまでの研究活動成果に接合し総合化しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、戦後における金融機関諸業態の機能変化と市場構造の変化を背景として金融業における自由化が進む過程を成果としてまとめる計画であったが、上述の研究実施状況で記したように、中間層信用に関する調査活動と戦後成長経済の構造変化に関する学会での論争を巡って、これまでに明らかにした論点をさらに整理する必要が生じたため、研究成果の内容を慎重に再検討せざるを得なかった。 なお、本研究課題に関連して、日本学術振興会外国人研究者招へい事業(研究課題「ナチ体制とドイツ戦時経済に関する新たな視点の経済史共同研究」を実施したが、このことは本研究課題の成果を豊富化することに役立ったが、それゆえに当初の予定通り実施することに副次的に影響した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、研究課題を推進する方向性とテーマおよび枠組は明確になったので、本研究課題の最終年度である平成27年度においては、一部国内での資料調査を補完的に行いつつ、二つのテーマの分析を進め、早急に成果として公表することにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に入って、洋書の注文が年度内に納入処理できるかどうかわからなかったため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の早い時期に関係洋書を注文・購入して残額を使用する。
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備考 |
研究代表者の調査活動が紹介されている雑誌記事アドレスを参考として記す。http://www.s-wissenschaft.de/dokumente/Wissenscha_150219123618.PDF
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