研究概要 |
平成25年度は、福井の産地分析にかかわるデータベースの作成、文献サーベイ、ならびにこれまでの桐生・福井にかかわる研究の発表を中心に作業を行った。 具体的には、Hashino and Otsuka (2013)'Hand-looms, power-looms, and production organizations'(Economic History Review 66-3, pp. 785-804)の桐生産地に関する分析で試みたような、個別機業の生産・技術の時系列的変化をとらえるデータベースを『福井県統計書』における十人以上工場の資料(1901, 1904, 1907, 1910, 1913, 1916, 1919年)に基づいて作成した。また、主に福井・桐生の両産地に関して、既存研究の整理ならびに数量的・質的データの利用可能性について福井県文書館、勝山市等で調査した。特に、本研究が対象とする産地を全国産地に位置づけるための重要な資料である『紡織要覧』については、利用可能な年次を把握し、平成26年度からデータベース作成が可能なように準備を進めた。さらに、桐生・福井の産地としての発展が、経済史分野のみならず開発経済学・経済発展論のなかでどのように位置づけられるかについて、Hashino and Otsuka (2013)'Cluster-based industrial development in contemporary developing countries and moderan Japanese economic history'(Journal of The Japanese and International Economies 30, pp. 19-32) で論じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後(特に26年度)は①西陣の発展に関する分析、並びに②福井産地の地理的拡大と制度的変化、③①・②の分析の桐生との比較を中心に作業を進める。さらに27年度に京都で行われる国際経済史会議にセッションを組織して参加するための準備を続行する。 ①については、分析のためのデータベース作成を完成させ、日本語でサーべイ論文を執筆する。②については、昨年度からのデータベースを用いた分析を開始するとともに、Hashino and Otsuka (2013) 'Expansion and Transformation of the Export-Oriented Silk Weaving District: The Case of Fukui in Japan from 1890 to 1919'(Discussion Paper Series 1303, Graduate School of Economics, Kobe University)の改訂版を英文ジャーナルに投稿する作業を行う。さらに'The Rise and Decline of Industrialization and Changing Labor Intensity: The Case of Export-Oriented Silk Weaving District in Modern Japan'をthe Fourth Asian Historical Economics Conference(イスタンブール、本年9月)し、英文雑誌に投稿するための準備を進める。③については、①、②の分析の結果をふまえて、『紡織要覧』の利用による全国産地の概要把握・三産地の位置づけ作業とともに、三産地比較のための分析枠組みを構築する。④については、現在、内外の研究者(経済史や開発経済学専攻)とともに 'Visiting Industrial Districts in History and Developing World'と題するセッションを組織し、本年7月にsecond callに応募するための準備を昨年度から進めているが、さらに内外の研究者との議論を深め、内容を確定するための作業を行う。
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