研究実績の概要 |
比較産地発展論の構築に向けて、最終年度は、第17回国際経済史会議(2015年8月)でパネル“Visiting Industrial Districts in History and Developing World”を組織し、歴史的に見た日本とヨーロッパ、現在成長しているアジア・アフリカにおける産業集積を同じプラットフォームの上で比較する初めての試みを行った。開発経済学における産業集積研究に広い歴史的視野を与え、歴史研究の重要性の再認識につながり、西欧の産地との比較に加えて日本の歴史的経験をグローバル経済史に位置付けるという意味でも、画期的だったと言える。そこでの問題提起や比較研究は、Hashino and Otsuka eds.(forthcoming) Industrial Districts in History and the Developing World (Springer)として刊行される予定である。 研究期間全体としては、桐生、西陣、福井のそれぞれの発展の特質と関連性を考察しつつ、個々の産地ならびに比較研究の成果を発表した。また福井の歴史的発展に関しては、The 4th Asian Hisorical Economics Confernceで報告し、一方で代表的先端企業セーレンの社史編纂に携わり、産地の発展を長期にわたって概観することができた。研究期間全体において上記の成果は、Economic History Review, Business History Review, Journal of the Japanese and International Economies等の査読付き国際英文雑誌、ならびに『セーレン経営史-希望の共有をめざして』等に掲載された。 また、桐生・西陣(京都)については、市民講座等での講演により研究成果を広く社会にも還元した。
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