本研究は、日本経済史の分野における「比較産地発展史」の構築を目指し、西陣・桐生・福井における産地の発展を個々に詳細に分析すると同時に、新技術の導入と制度革新という観点から産地の共通点や相違点を明らかにした。さらに本研究は、産業集積研究が活発な開発経済学の分野と日本経済史研究との融合も試みた。その結果、東西の歴史的産地ならびに現代の途上国の産業集積において、共通した制度や仕組みが重要であったことが示された。具体的には、マーシャルの言う集積の外部経済を超えて、新技術の導入を支えた同業者組織の機能や地方政府のサポートという制度が、産地・産業集積の発展に普遍的に重要であったことが明らかにされた。
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