研究課題/領域番号 |
25380426
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
清水 耕一 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (00235649)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | トヨタ自動車 / 原価・能率管理 / 賃金(生産性給) / 生産性向上活動 / 品質管理 / 労使関係 |
研究実績の概要 |
平成26年度の当初研究計画は、①前年度聞き取り調査結果の整理、②トヨタ自動車の原価・能率管理についての聞き取り調査、③原価・能率管理とサプラーヤーおよびディーラーとの関係についてのサンプル企業への聞き取り調査、④研究会と学会報告を行う予定であった。しかし、私(研究代表者)に5月に病気を発症し、7~10月に手術と治療が続き、治療の副作用が治ったのはやっと12月末であった。そのため、本年度は以下のように最小限の研究しか実施できなかった。 ①聞き取り調査結果の整理を始めたのは2015年1月になってからであり、26年度中は論文化できなかったが、研究成果の中心部分を学会報告するために研究発表用のパワーポイント資料を作成し、3月27日にパリの自動車工業会において開催されたGERPISAのセミナーにおいて口頭発表を行った。 ②トヨタ自動車の原価・能率管理についての聞き取り調査は前年度に終了していたことから、治療の初期段階にあった9月にトヨタ自動車の人事部および労働組合に対して、2004年の技能系賃金制度の改定内容および労使間協議の内容について聞き取り調査を行った。さらに、当初研究計画では予定していなかったが、能率に影響する品質保証の仕組みについて、3月にトヨタ自動車TQM推進部に対して聞き取り調査を行った。聞き取り内容は相手方の了承を得て録音し、テープ起こししてある(3月分は進行中)。 ③トヨタ紡織特別顧問の好川純一氏の講義とインタビュー時の説明によってトヨタ自動車とグループ企業のトヨタ紡織との取引関係について知見を得たが、それ以上の調査研究は行えなかった。 ④研究報告は、①で言及した研究発表の他、前年度のEAEPE(欧州進化経済学会)第25回年次大会で発表した論文を改善して、6月に京都大学で開催されたGERPISAの国際シンポジウムにおいて報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病気治療のため予定した調査研究を全て行うことはできなかったが、研究課題の本質的な部分に関する研究は当初計画以上に進んだ。 トヨタ自動車の原価・能率管理については、すでに前年度に聞き取り調査を終えていたが、本年度には2004年に改定された技能系賃金制度と能率管理・生産性向上活動との関係を把握するために、トヨタ自動車人事部と労働組合に新賃金制度および労使間協議における争点について聞き取り調査を行った。さらに、当初計画にはなかったが、能率と直接的に関係する工場内の品質管理システムについて、トヨタ自動車のTQM推進部に聞き取り調査を行った。当初予定したサプライヤー等の周辺的問題についての調査は行えなかったが、賃金と連動した原価・能率管理の仕組みと働き方についてはその歴史的進化と現状を説明できるだけの調査研究を当初計画以上に実施できた。 研究会活動・学会報告については、健康上の問題から研究会活動は行えなかったが、手術前の6月に自動車産業の国際共同研究組織GERPISAの京都大学における国際シンポジウムにおいて日本の自動車メーカーの経営戦略に関するThe Strategic Behavior of Japanese Carmakers and its Impact on Employmentを報告(フルペーパー有)するとともに、治療終了後の3月にパリの自動車工業会におけるGERPISAの研究セミナーにおいて本研究成果の要点を説明したChangements dans le systeme de salaires et la gestion de la productivite chez Toyotaを報告(PPTスライドのみ)した。 以上のように、収集した資料および聞き取り調査結果の整理と論文作成は平成27年度に先送りせざるを得なかったが、必要な調査研究は計画以上に実施できた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成27年度には、平成25年度および26年度の調査結果をまとめるとともに、本研究の意義を明らかにするために国内外の学会(パリにおける6月のGERPISAの国際シンポジウムおよび10月の日仏経済学会、3月の進化経済学会等)および国内の研究会において成果を発表し、議論を深めたい。なお、研究成果の論文化については、平成27年度にディスカッション・ペーパーおよび投稿論文の執筆を行い、その後に著書にまとめて刊行したい。 また、当初予定していたが実施しえなかった聞き取り調査については、とくに工場内におけるトヨタ独自の技術員室の仕事(工程改善、品質維持改善、安全等)に関する研究、原価・能率管理におけるサプライヤーおよびディーラーの関与の仕方についても可能な限り調査研究を進めたい。 研究代表者である私の膀胱癌については根治治療ではないことから再発の可能性を否定できず、また現時点では前立腺癌も疑われていることから不安は消えないが、平成27年4月現在では健康状態が安定していることから、平成27年度の研究は予定どおり順調に進められるものと思っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、既述のように5月に研究に支障のある病気を発症し、7~12月には手術と治療、副作用といった健康上の問題から予定通りに研究が進められなかったことにある。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の繰越し金額も含めた研究費は、追加的な調査旅費とテープ起こし費用、研究成果の発表のための研究会・国内学会参加旅費、海外学会報告旅費、論文作成・投稿費用である。
|