「ドイツ農業とアメリカ金融資本の歴史的相関ーー未公刊一次資料に基づく実証研究」に関する平成29年度の研究経過と成果は、次のとおりである。図書館調査を踏まえた文献と資料の整備については、「1953年のロンドン債務協定の前史とアメリカ債(Amerika-Anleihe)」の問題に注目し、前年度までの成果を補強する文献検索を、「ベルリン図書館」(Staatsbibliothek zu Berlin)において行った。「ロンドン債務協定」を主導したドイツ側全権代表アプス(H.J.Abs)が残した貴重な記録、例えば「外交政策と外債ーー1952年の追憶」そして「ドイツの外債・外国信用の諸問題」等を閲覧するとともに、ヴェーラー(H.-U.Wehler)の浩瀚な研究書「ドイツ社会史」等を通読して研究史を整理し、ワイマル期ドイツ農業に関する知見を深めたうえで、当該研究全体を総括しつつ次の課題を展望する論考「1920年代以降期のドイツにおけるアメリカ債の償却ーーロンドン債務協定の前史に関する一考察」を、「社会経済史学」82巻4号に掲載した。さらに、「ドレスデン図書館」(Saechsische Landesbibliothek)において、ロッシャー(W.Roscher)の古典的な作品「国民経済の体系」中の家族世襲財産(Familienfideikommiss)に関する箇所を精読し、ドイツ大土地所有の理解を深めて、当該研究に繋がる次の継続的課題に備えた。
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